「14日間の少年」
◆…14日間の少年…◆
ベリスの一角にあるケムリ売買兼鑑定所
あまり大きくない二階建ての建物で一階が店になっている。店内にはケムリの入った瓶が棚に並び店の一番奥の中央に鑑定と売買をするカウンターが設けられ店主が座っていた。
利便に特化したケムリや価値の高いケムリ、純度の高いものなどはカウンター横の強化ガラスのショーケースに、混ぜものや価値の低いもの未鑑定のものなどは壁際の木の棚に置かれている。
防犯や万引きの対策は特にないが店主のすぐ側にはライフルや拳銃が置かれていてそれらはすぐ撃てるように安全装置を外したままになっていた。
「こんちわ、店主ご無沙汰」
ドアを開けて店に入ってきたのは兜を被った右目に傷のある十字目の男。薄汚れた白のポロシャツに黒のパンツ、足首まであるブーツを履いて腰には刀を下げていた
「いらっしゃい。今日はどうした」
店主は丸眼鏡をクイッと上げて男を見た
「ケムリを売りたいんだ。日雇いのバイトしたら、一部をケムリで払われちまって」
困った様子で苦笑いする男は牛乳瓶ほどある容器を見せた
「現金が必要な身には迷惑な話だな、どれ見てみよう」
店主は男からケムリ入りの容器を受け取った。店主は瓶からケムリをガラス製のスポイトで取り出しスライドガラスに乗せると鑑定機にかけた
「純度はB…か。ケムリの主の保証書はもらったんだろうな?」
「ああ、もらったよ。なんでも猫科の動物に変身できるケムリとかで本人は耳をネコ耳にしてた」
男は店主にケムリの主についての情報が書かれた写真付きの保証書を渡した。店主は写真を見て笑いながら頷いた
「ほーこれは面白い。純度も申し分ないし、買取額は悪くないと思うぞ」
「よかった助かるよ」
男はホッとしたのか壁際の棚に手をかけた
「ところで鉄条くん」
名を呼ばれた男はレジを打つ店主の横顔を見た
「君の横にある棚はぐらつきやすいから、触らないように」
「え?」
コレのこと?
今し方手をかけた棚を見上げた時にはすでにかなり傾いていた
「ううぉ!?」
鉄条はとっさに棚をつかみグッと体重をかけ傾きを正した
が
陳列されていた瓶が一つ傾きとぐらつきに耐えかね落下した。床に落ち割れた瓶からジュワッと黒いケムリが溢れ鉄条の足元から立ち上り全身を包んだ
「わっわぁっ!!」
「どうした…あーぁ…」
店主が鉄条を見た時にはケムリは晴れていた
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