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「…ッ…んっ…んん…」
重なる唇は熱を帯びて絡み合い銀の糸を紡ぎ2人を繋いだ
『ハァ…ッ…鉄条…からだ…力入んない…』
唇が離れると毒蛾はとろんとした眼で鉄条を見つめた
『……毒蛾…あんまり可愛いこと言わないでくれ…歯止めが利かなくなるから…』
鉄条は赤面して苦しそうに毒蛾から顔を背けた
『…いいよ』
「!!」
毒蛾の囁きを鉄条は聞き逃さなかった
聞き逃せなかった
『…鉄条に………あげる』
耳元に囁かれる甘い誘惑。鉄条に抗うすべなどなかった…
「毒…ツッ!ぐぁっ」
足の激痛以外は。
「いだだだ!!」
『鉄条!』
『…うぅ…う…ごめん……』
『…ううん…仕方ない…よ』
毒蛾は首を振って少し笑った。鉄条は足の痛みが辛いからかそれとも最大のチャンスを逃したからか盛大に落ち込んだ。
俯いた顔は影が落ちて全く見えなくなった。毒蛾はオロオロして鉄条を元気づけようと考えて
(…………)
頬に軽くキスをした
「!」
鉄条はキスに驚いて、まぁいいかと諦めの混ざった笑顔で返した
『毒蛾…』
『…一緒にいられるだけで…いいから…』
『うん…』
2人は寄り添って窓から夜空を眺めた
『……ありがとう…鉄条』
毒蛾は静かにつぶやいた。鉄条が穏やかに返す
『…どうしたんだよ…急に』
『…一日、楽しかったから…』
毒蛾は眠る皆を見た
『…みんなでご飯食べて…一番最初にお風呂に入って…こうやって近くに居られて…笑って…』
毒蛾は目を潤ませて微笑んだ
『…鉄条が悪魔に願ったから…こうして…過ごせた…』
『………』
(そんな清い考えじゃなかったけどな…)
鉄条は毒蛾の幸せそうな笑顔にちょっと罪悪感を感じつつ、そっと身を寄せた
『…だから…鉄条たちのケガは俺が必ず治すから…』
『……ん』
毒蛾は鉄条の手をぐっと握り、堅く誓った。鉄条は微笑みで返しふと思い出したように毒蛾に話しかけた
『…そういえば、この体質は…いつまで持続するんだろうなぁ…』
『…?…いつまでって…』
毒蛾が首を傾げると鉄条はちょっと真面目に話す
『…だって…悪魔がすることだし…いつまでも毒無効とは限らないだろ?』
『…悪魔は気まぐれ…か』
想定外の案に毒蛾は気落ちした様子で俯いた
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