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「あぶぇし!!」

顔面を殴られた鉄条は軽く腰をひねってうつ伏せになった。毒蛾は立ち上がり、這いつくばる鉄条を叱り飛ばした

「何アホなこと願ってる!!お前の足や豚のケガ治すのが先だろう!!」

「…いつっ…だって本当に叶うとは思ってなくて…」

「だからって…おまっ」

「毒蛾…そんくらいにしてやれよ」

興奮した毒蛾を佐治がなだめた

「…佐治…」

牛島田が佐治につづく

「願って叶ってしまったもんは仕方ない…前向きに考えんといかんじゃろ」

「………そう……だな」

毒蛾は大声を出したことを恥じて辛そうに鉄条から目をそらした

「…分かってるよ…俺や鉄条を心配ゴホッ…してくれてるんだよね…毒蛾は」

豚が優しく言うと毒蛾はちょっと顔を赤らめた

「………」

「…毒蛾」

鉄条に呼びかけられて毒蛾は鉄条に振り向く

「……」

「今まで出来なかったこと、しよう」

鉄条はニッと笑って見せた

「…出来なかった…こと」

毒蛾がつぶやくと皆楽しそうに提案をしていった

「…そうじゃな、飯をみんなで囲めるのぉ。」

「…たまにはみんなで寝るのもいいんじゃないか」

「一番風呂に入れるよ…ゲホッ」

「えーとえーと…あっ!私とチューができますね!」

「「え…」」

夏木の一言で一瞬、場が静かになった

「…と……とりあえず、もう孤立しなくていいんだ。な、毒蛾」

「…うん」

毒蛾は困ったような嬉しいような、ぎごちない笑顔で小さく頷いた。



その日の夕方

毒蛾はお風呂の準備をして皆に勧められ一番最初に湯船に浸かった

(わ…お湯が溢れる……あったかい…)

一番風呂を満喫してのほほんとしていると

「アニキ!せっかくですからお背中流します!」

夏木がわくわくした面もちで近づいてきた

問題はなかったが

「…だからいいって」

やはり毒蛾は断った。


夕食になり、毒蛾は初めて皆と食事を囲んだ。

話題のつきない食卓で毒蛾は久しぶりに声を出して笑った。鉄条はそんな毒蛾を見て愛おしそうに微笑んだ





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