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「……と言うワケなんだ」
夕方
封筒作りの内職を手伝いながら毒蛾は白アリ駆除でのことを話した
「……毒蛾の毒液で死なない生き物なんかいるのか?」
佐治が裁縫の内職をしながら苦い顔をする
「わからない…でもこれでは仕事にならないな…」
「新種の白アリかぁ…困ったのぉ」
皆首を傾げたり腕組みして悩んだ
その中で鉄条だけがバツのわるそうな顔をしていた
「…鉄条さん包帯取り替えますね」
「…えっああ…うん」
豚の包帯を取り替え終えた夏木が鉄条に話しかけた。包帯を取り替えられながら鉄条は毒蛾を見る。それに気づいた毒蛾は鉄条を見返した
「……鉄条、足どんな具合だ?」
「…平気さ…なぁ、ちょっとここまで来てくれないか」
鉄条は毒蛾を手招きした
「……?」
毒蛾は椅子から立ち上がると鉄条のすぐ横に座った
「…鉄条、どうし…―」
座った瞬間、顔を寄せると鉄条は毒蛾にキスをした。
その場の空気が固まった
一番驚いたのは毒蛾だった
「ん!?…ちょっ…何するんだ!!死ぬ気……か……え?」
慌てて鉄条をはねのけた後、毒蛾は目を丸くした
「…多分白アリ自体は何の変化もしてない」
鉄条に苦しむ様子はなく淡々と話し続ける
「変わったのは毒蛾、お前だよ。」
鉄条は断言し皆驚いて毒蛾を見た
「おい…どうなってる…」
「何で…突然…どうゆうことじゃ?!」
佐治も牛島田も答えが見えず混乱し毒蛾だけが一つの答えにたどり着きつつあった
「……鉄条…お前…まさか!」
「…叶うなんて……思ってなかったんだけどな…はは…」
鉄条の苦笑いで毒蛾は確信した
「魔夜中に願ったのか、鉄条!!」
「ええっ!?…ゲホッ」
「鉄条のアニキが…」
「…そう…俺が願った…『毒蛾から毒をなくすことが出来たら』ってな…そしたら…毒蛾と色々できるなぁと思ったから…」
鉄条の告白に誰も何も言えず毒蛾だけが怒りに身を震わせていた
「………の」
「…毒蛾?」
鉄条が呼びかけると毒蛾は半泣きで鉄条を睨みつけ、
「この馬鹿野郎ぉ!!!!」
力の限り殴った。
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