「魔夜中の後で」


◆…魔夜中の後で…◆



―魔夜中―

ベリス出身の悪魔が自分の故郷に住む者たちの夢を叶えるために帰ってくる特別な夜

でも悪魔は気まぐれ。善人ぶった考え方が大嫌いだが、醜く欲深い心・アホくさい願いなどはウケがよく叶えてくれる傾向がある


魔夜中、当日

『ズシーン…ズシーン…』

{ただいま〜…ただいま〜…}

悪魔が帰ってくると皆一斉に願いを祈った。それぞれ祈る中鉄条は

(い痛い…足がスゲェ痛いです。なので…せめてお見舞いに現金を下さい…)

現状脱却を願った。が、もう一つ願ってしまう。

欲深く、アホくさい願いを…


(……でも…もし―――出来たら……足…痛いまんまでもいいなぁ)

それが始まりだった。



数分後

「…何の反応もないな。」

「失敗かァーッ」

「誰の願いも叶いませんでしたねぇ…」

皆ガッカリした面もちで明日にそなえ眠りにつくことにした。毒蛾はいつものように個室(浴室)に向かいその途中

「…ッ…?」

一瞬、自分の中から何かがふっと抜け落ちたような気がして、

(…気のせいか…)

特に変化がないことを確認するとまた歩きだした


***


翌日

毒蛾はいつものように白アリ駆除のバイトに出かけた

「お兄さん、うちの庭にある木に白アリが住み着いているんだ、このままじゃ家に入りかねない。よろしく頼むよ」

「…はい」

今日初の仕事を受け毒蛾は白アリの蠢く幹にツバを吐きかけた

「…プーップップッ!!」

しかし、いくらツバを吐いても白アリは一向に死なない

(………あれ)

毒蛾はケムリが出ない代わりに体内に毒素を持ち唾液が毒素になっている。白アリ駆除は元手のかからない仕事だった


数分後

一向に白アリは駆除できず、結局市販の害虫駆除パウダースプレーを吹きかけ白アリを駆除した

(……やれやれ…これじゃ赤字になる…)

「なんで死ななかったんだろう…新種の白アリか…?」

「あ!アニキー今帰りですかー?」

帰路を歩いているとウェイトレスのバイトをしてきた夏木とかち合った

「……夏木…今日は早番か」

「はい!…Nは明日まとめてもらえます。」

「…そうか」

毒蛾はとりあえず今日の白アリ駆除を止めて家に戻ることにした




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