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鉄条が廃墟の教会に到着したとき毒蛾は中央にある悪魔サタンの像を見つめていた
「……………毒蛾」
ボロのドアを通り教会内に入る。毒蛾はサッと振り向き鉄条を見つけると眉をひそめ驚いた
「…鉄……」
フラつきながらゆっくり歩み寄る鉄条を毒蛾は近づくことも後ずさりすることもなくその場に立ち尽くし目の前に来るまで待った
「……」
鉄条が触れようとして毒蛾は一瞬身を引く。悲しそうな顔で体を震わせ、うつむいてポロッと涙を流した
「どうして泣くの?」
「い…色々混ざって…よく…分からない…」
恥ずかしさと戸惑いと罪悪感と不安と…
そして
「……死ななかったよ」
安堵
「…ッ!!…―鉄条ぉ」
毒蛾は怖い夢から目覚めた子供のように鉄条に抱きついて声を押し殺し顔をくしゃくしゃにして泣いた
「……う…うぅ…うー…!」
「…怖かったな…ごめんな」
鉄条はそんな毒蛾の背中をさすって優しく抱き締めた
***
「…まだ…顔色が悪いな…」
「三日も何も食べなきゃな…」
毒蛾と鉄条は廃墟の教会の比較的廃れていない長椅子に座って話していた。半分砕けたステンドグラスは西日でオレンジがかった光を透かしキラキラと床に美しく模様を映していた
「……そういえば、こんなところで何してたんだ?」
「…お前から…逃げてた…」
「…………」
毒蛾は鉄条にキスをされた恥ずかしさと死なせてしまうのではないかという重い不安と罪悪感から逃げ出すために誰もいないところを探しこの教会を見つけ身を隠すように遅くまで過ごしていた
「こんな気持ち…初めてだったから…」
「…そっか」
鉄条がふっと息を吐いて毒蛾から目線を外すと毒蛾がグッと服を掴んで顔を寄せた
「…!」
「鉄条約束しろ。」
毒蛾の真剣な顔に鉄条は沈黙して顔が近いのでちょっと照れた
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