「不確実な契り」
◆…不確実な契り…◆
「約束してくれ、毒蛾」
買い物帰り、荷物を抱えて歩く2人きりの夜道
「もし、オレが怪我をして重傷で、死にそうになって絶対に助からない時」
すれ違う人はいない
「その時は…」
「…」
「お前のキス(毒)で、死なせてくれないか」
弱々しく灯る街灯の下
鉄条は毒蛾に言った
「…鉄条……」
毒蛾は鉄条を見据えて潤んだ瞳で
ただ無言で荷物を持っていない方の腕で顔をぶん殴った
「−ウゴォッ!!?」
鉄条はその勢いでしりもちをついた。土煙が少し舞った
「あたたー…」
「寝言は寝て言え。」
スッパリと言い放った言葉とは裏腹に毒蛾は心底不快な表情をしていた
「…それに、いくら重傷でも回復系のケムリがあれば…」
毒蛾が買い出しの中に混ざるケムリの瓶に目をやる
「でもケムリがなかったら?あっても間に合わなかったら?」
「…−」
鉄条の最悪な予測に毒蛾はさらに眉間にしわを寄せた。毒蛾は鉄条が死ぬのを想像して嫌そうにして
「…チャ、チャワンタケで生き返ればいいだろ。」
最終的には投げやりになった
「…キクラゲだってば」
鉄条は立ち上がってパンパンと土を払いながらツッコミを入れた
「…とにかく、変な話はするな。」
「約束してくれないのか?」
鉄条が寂しそうに言うと毒蛾は真剣な面もちで
「…絶対…そんな状況にさせない。死なせない」
強い意志を感じさせるような真っ直ぐな眼で鉄条を見た
「……」
鉄条はチラッと目線を外して数秒考えて毒蛾を見た
「…それって、絶対オレとキスしたくないってこと?」
「なんっ…何でそう受けとるんだ!そういう意味じゃ…−ぁ」
毒蛾はカァッと赤くなって『やられた!』というような顔をした
「そういう意味じゃ…なに?」
『そういう意味ではない。キスをしたくないわけではない』
そんな意味であることをニヤニヤしながら期待する鉄条に毒蛾は悔しそうに赤面して苦肉の策で
「そっそういう意味じゃい!!」
そう叫んだ
「牛島田かよ!」
軽く吹き出しながらも鉄条は毒蛾にツッコミを入れた
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