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優しい表情の鉄条が

『ふ…女の子は軽いな』

昨日の夏木に向ける表情とダブった。

「こ…こうゆうのは…夏木にしてやれ」

「…へ?」

毒蛾の突拍子もない発言に鉄条は呆気にとられた

「なんで?」

毒蛾はふてくされたような拗ねた顔で鉄条を見て答えた

「鉄条は…本当は夏木が好きなんだろ」

鉄条は数秒固まって

「……ヤキモチ?」

ポロッとこぼした

「んな!ち、違う!」

鉄条の直球な意見に毒蛾は図星ですと言わんばかりに真っ赤になった

「ふふ…毒蛾可愛いなぁ」

鉄条は満足げに笑った

「笑い事じゃ…」

「今さっき言ったばっかりだろ…好きだって…信じられない?」

「……」

毒蛾は苦しそうに胸を押さえた

「…信じてほしい…毒蛾…好きだ…」

耳元でやさしく囁く甘い声。手に伝わるキスの感覚…

毒蛾の表情が少しだけ和らいだ


「…鉄条…」

毒蛾は眼を潤ませ照れ気味にぎこちなく笑った

「…ー」

それを見た瞬間、鉄条の優しかった表情が変わった。

「……毒蛾」

鉄条は突然毒蛾の服の中に手を突っ込んで背中をまさぐった

「うひゃあっ!ちょっと鉄条!?」

「毒蛾、好きだ…」

突然のことに毒蛾の身体は硬直して足から力が抜け、とっさに鉄条の肩を掴んだ。抱きつかれた体勢になった鉄条はやめるどころか背中、脇腹、胸へと腕を滑らせていく

「あっいっヤダァッ!!」

初めての感覚に毒蛾は驚くあまり半泣きで大声を上げ鉄条を押し退け

「!!―うごぁ!!」

その時飛散した唾液が鉄条の目に入った。

「め、目がぁ…」

「ハッ、ムス…カじゃない!鉄条!」

毒蛾は我に返り膝折れする鉄条の顔を両手でガッと掴んで目の様子を伺う。

「!」

「大丈夫か口に入ってたら…―」

ぐっと顔を近づけられ今度は鉄条がちょっと顔を赤らめた。

「…や…大丈夫だったみたいだ」

それを聞くと毒蛾はホッとしたのかそのまま鉄条の胸にポスッと身をあずけた。

「よかった…」

「……魔が差した…ごめん」

鉄条は脱力した毒蛾の背中をポンポンと優しくたたいた。


床にかがんだまましばらく経ち

「………」

毒蛾は何か考えて、

「!」

ふっと鉄条を抱きしめた。

「ど、毒蛾…?」

明らかに動揺する鉄条に毒蛾は無言で抱きついたまま離さずでも恥ずかしいのか顔は赤くなっていた。

「……―けど」

毒蛾が小声で呟く。

「え?」

「…き…キスは出来ないけど、これなら…出来る…から…」

「……」

鉄条は嬉しそうに微笑んで

「……だな」

毒蛾の背にに手を回して、優しく優しく抱きしめて

「ありがと…」

「……………ぅん」

湧き上がる幸せを温もりと共にじんわり噛みしめた。



◇…END…◇


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