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鉄条は毒蛾に近づくと、頬を撫でようと手を出して、

「…電球取り替える。」

気づいた毒蛾はスルリとかわしそのまま電球のストックのある棚に向かった。

(…なんか…怒ってる…?)

いつもと変わらない様に見える毒蛾の無表情が鉄条にはなぜか冷ややかに映った


***


イスに立ち電球をクルクルひねって取り外す毒蛾を鉄条はイスに座り直して見上げた。

「…――」

そしてボソッと胸の内を口にした。


「キスしたい。」


鉄条から発せられた一言。

その言葉の意味を理解するまで電球をつけ変えていた毒蛾の動きが止まった。

数秒後同じ体勢で、両腕を上げて電球を掴んだままで顔と視線だけ鉄条に向けた。

「死ぬぞ。」

それは怒りからではなく真実からの一言。毒蛾の唾液には毒素が含まれ目に入れば数分見えなくなり体内に入れば死に至る。

おかげで毒蛾に女性経験はゼロに等しかった。

「だよなー…」

カクンとうなだれ肯定する鉄条含み買い物でいない他の十字目メンバー全員がそのことを知っていた。


「鉄条、出来ないと知っているのに望むのは無謀だ」

的確な意見に鉄条は反論せず、電球を付け終えイスから降りる毒蛾を見る。そして考えた。

「……無謀か…なら」

鉄条は立ち上がると毒蛾の手を掴み、

「…出来ることを探すか」

そういって毒蛾の手のひらに唇を寄せた。

「…何す」

戸惑う毒蛾の手越しに鉄条の左目が覗く。

「知ってるか手のひらにキスするのは『私に心をゆるして欲しい』って意味があるんだってさ」

そう囁くと鉄条は今度は音を立てて毒蛾の手にキスし始めた。

『…ちゅ…っ』

手から伝う感覚と熱に毒蛾は顔を赤らめピクッと体を震わせた。

「…ん…ちょっと…鉄条…」

「好きだ、毒蛾…愛してる」

「……」

―簡単に言いやがって―

そう言わんばかりに毒蛾は赤面したままムッとした。

「…そうゆう顔も可愛くて好きだよ」

鉄条は毒蛾の手に頬ずりして楽しそうに微笑んだ。



***

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