「ヘビィ・ジャンキー」


†ヘビィ・ジャンキー†



生きてるうちは悩みは尽きない。人は悩みから逃げられない。そうまるで、足が抜けない泥濘(ぬかるみ)だ。でもそれは必然で、だからこそヒトはヒトであると誰かが言ってた気がする…

まったくもって、クソッくらえだ



***



その触れる腕はやけに熱を帯びている。暗い部屋にベッドが一つ。星も月明かりさえなく視界は閉ざされ何も映さない

ただ、熱を…自分以外の誰かを感じる。

「はぁ…はぁ……」

またがるように乗る俺を下から押し上げる快感

それが全てを支配していく…

「ンッ…ふぁ…っ…」

合金の背骨が軋むほどの熱と衝動が俺を貫く。中心から広がる痺れが足先まで往来する。強張りと脱力を繰り返す。意識が意味を持たなくなる

「はぁ…は……」

「…ッ…ジェット」

「うぅ…あ」

腰を支え、撫でさする手が俺を高めていく。髪を乱しのけぞれば更に深く相手を感じる

「はぁ…あ…んんっ…」

思考は熱で焼き切れる。鈍い痛みが体を襲う

「ジェット…ッ…ジェット…―!!」

「ひぃうっ…アツ…イッ」

腹の奥に熱が溢れて内股を濡らす

突き詰めた先、最後に残るのは



「アぁッ…イク…ッ」



それがすべてだ



***



「今夜の君はいつになく自分に優しくないね、ジェット」

情事の後

横を向いて寝る俺の背中にジョーが話しかけた

「何が言いたい…?」

俺は寝返り振り向きながら上半身を起こして座るジョーを見上げる

「…どうして無理するの」

「無理なんかしてな」

「してる。」

俺の否定をハッキリとした声で遮る。威圧感はない

「……」

「僕は君の望むことをしたいんだ…なのに、君は自分を傷つけてる。僕にはそう見える」

ジョーの顔は段々険しくなっていった。本人は多分気づいてない

「…セックスすんのが、そんなに悪いことか?」

俺は動揺を誘ってみた。案の定、ジョーは赤面した

「…ッ……そっそれだけを重点にしてるわけじゃないよ」

「…例えば?」

「……ぅぅ」

ジョーは押し黙ってしまった。ちょっといじめすぎたかな?

「ジョー…こっち」

俺はジョーに手招きして顔を寄せてキスした

「俺は気持ちいいからシてるだけだ…シてる時は辛さを感じない」

「……」

これでジョーは安心する

そう思った



思った だけだった






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