┗4

「アルベルトが俺を悲しませ…る…―」

心拍が上がる。イヤな気持ちが胸に広がる

そして

「…004は過去愛した人がいる。彼は今もその人を愛してる」

「…っ…」

009の言葉が俺の胸を突いた

「君にその人を重ねるのが、許せない」

「…―」

それは、俺も薄々気づいていた

俺を抱きしめる腕は

過去、別の誰かを抱いていたと…

「ジェットは…それでもかまわないんだね…」

…かまわなくない

悲しい

「…―ぅ」

でも、俺は…

「悲しいのに…それでも好きなんだね」

俺はうつむいて泣いた

「…ぅん」

頷いた拍子に涙が009の手に落ちた

「泣かないで…君が決めたなら…いいんだ…仕方ないよね…好きなんだから」

「…―」

009の言葉は全部受け止めるように優しく優しく俺の心を包んだ

「君が納得のいくように生きてくれれば僕はそれでいいんだよ…」

「ジョー…」





…イエスキリストは

愛を忘れた人々に愛を教えた

見返りもなくただ与え続けた



そんなこと出来ないと思っていた

存在しないと思っていた


実際に触れて知るまでは…



「―さて、タバコも終わったし、中に入ろうか。」

ふと温もりが遠ざかるのを感じた

009が手を離していた

「僕ちょっと003に呼ばれてるから、」

「あ…」

「…004とうまくいった後でも…またいつか…こうして手を握らせてね」

悲しげに微笑み009は室内に向かった

優しい009。どうして俺はこんなにいい人を

一番に思えなかったんだろう


「ま、まて…ょ」

「…ん?」

優しくて悲しいひと。いつまでも俺だけを見てくれてる。本当は新しい恋を見つけることだって出来るのに、俺が縛りつけてる

一番好きじゃ、ないのに…

でも

「ジョー…」

願ってしまう

「俺が独りぼっちになったら…またこうして一緒にいてくれるか」


わがままだってわかってる

わかってるのに


「…もちろんだよ」


袖を掴んで引き止めた右手にそっと009の手が触れた

「いつでも…待ってるよ」

笑顔で投げかけられる優しい声

包まれる安らぎを知ってしまった

帰る場所がある喜びを…


『なぁ…ずっと俺だけの…"とまり木"でいてくれよ』


そう言いたかったけど、俺には言う資格がないから

また握ってくれた手を、握り返すことしか

できなかった




終わり


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