┗3
「チープな幸せだな」
俺は思ったことをそのまま口にした
「…そうかもね…でも、僕は失うことの悲しさを知ってるから…」
一緒に育った孤児
親同然だった神父
名前も聞けなかった友達
皆BGの犠牲になった人間
そして―
「…だから一緒にいる幸せを知ってる」
俺たちはBGの鎖で繋がれた…仲間
「…」
「こうして君の姿を見て、君の声を聴いて、君に触れるだけ…それだけで僕はどうしようもなく幸せになれるんだよ」
ささやかな希望。そこに009は幸せを見い出している
だからこそ、納得できなかった
「よく言うぜ…本当は…自分のものにしたいくせに」
「…」
「でなきゃ、アルベルトに嫉妬するお前は矛盾してる」
俺は009の核心を突いた
誰だって欲しいと思えば止まらない
手に入らないのに見ているだけで満ち足りる人間なんていないんだと…
「…そうだね…欲は果てしないから」
009は否定をせず俺は肩すかしをくらった
「…」
「でも、」
「…え」
009は真剣な目をしていた
「君を幸せにできないなら、」
「―…」
「そんなものいらない」
燃えるように強く。それでいて静かに009の両目は俺をとらえていた
「!!」
その眼差しに俺は動けなくなった
「僕は…君が大事だから…」
009は淡々と話し始めた
「僕が嫉妬するのはね…004が許せないからなんだ」
「…俺を独り占めしてることがか?」
「ううん…」
009は軽く首を振って今度は寂しそうな目で俺を見た
「彼が…君を悲しませるからだよ」
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