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月明かりの綺麗な夜

ギルモア邸に来ていた俺はタバコを吸う為テラスにいた

「ぁ…タバコ止められなかったんだね」

「…あぁ禁煙失敗。」

そこへ当たり前のように009が寄ってきた

いつもと同じだ…


「ねぇ…ジェット…」

「んー?」

「君は、いつになったら僕のものになってくれる?」

「…生きてるうちは無いな」

そう、いつものふざけた会話だ

「はは…厳しいなぁ」

同じはず、だった


「じゃあ…死んだら、僕のものになってくれるの?」

一瞬

風が止んだ


「…笑えない冗談だ」

「…冗談じゃなかったら…笑えないのも当たり前だと思わない…?」

「…―」

背筋が寒くなった

009は静かに俺を見据えた


「…ふふ…そんなに構えないでよ…」

「…」

009はいつもの顔に戻ったが俺の中には少しわだかまりが残っていた

「―…ふぅー」

俺は緊迫した気持ちを紛らわそうとタバコをフィルターギリギリまで吸ってテラスから放った

赤い点が放物線を描き地面に落ち消えた

「大丈夫、殺さないよ」

優しく微笑んで言われてもその言葉には信憑性が欠けているような気がした

「殺さねぇ?…はっ…どーだか…」

「…君を傷つけるなんて僕には出来ないよ…こうするのが…精一杯」

「―!……」

009は俺の右手を持って両手でそっと握った

「君が近くにいると思うと嬉しくて…君に会えることがすごく、すごく幸せだ」

ただ手を握っているだけなのに009は嬉しそうに微笑んで、大切なものを大切に扱うように握った俺の手を包んだ

「……―」

俺は手を握るだけでそんな幸せな顔はできないと思った




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