┗2
「おはようジェット」
「……ん」
朝
先に起きていたアルベルトは黒のハイネックと白のスラックスへ着替えを終えてダイニングテーブルについていた
朝食にソーセージとポーチドエッグにビシソワーズスープ、こんがりトーストした厚切りの食パンを食べていた
ジェットと呼ばれた男はアルベルトを数秒見つめて疲れた様子の顔で洗面台へ向かった
「…何だ寝付くのが遅かったのか?」
アルベルトがジェットの背中へ声をかけて
「……誰のせいだと」
ジェットは小声でかえした
「?…なに」
「なんでもない」
アルベルトは首を傾げソーセージをフォークで刺した
(アメリカから押し掛けてきて3日…時差ボケってやつか…?)
アルベルトは昨夜のジェットの様子を思い返し、ふと自分が見た夢を思い出した
***
嫌な夢を見た。
俺は戦場で1人佇んでいて見渡すと何人もの兵士に囲まれていた
「ブラックゴーストめ!!」
兵士の1人が敵意をむき出しにして俺に言い放って俺は眉一つ動かさずその男を撃ち殺した
(―…なん…だ…?俺は一体)
俺は黒地に赤いボタンとスカーフの戦闘服を着ていた
「……―!」(体が―!?)
体が自分の意志とは無関係に動きその動きは感情を全く伴わず目の前にいる人間を殺めていく
返り血で体がどす黒い赤で染まっていった
「アルベルトー」
その声へ振り返ると普段着のジェットが笑顔で駆け寄ってくるのが見えた
(…―!!…ジェット!来るな!!)
叫びは声にならず俺の体は一点を見つめ走りだし、その先にいたアイツにレーザーナイフで斬りつけて…
ジェットは真っ赤に染まってその場に倒れた
「あ…あぁ…」
「…また、置いていかれたのね…あなたが愛したからよ…かわいそうな青年ね…」
背後に佇む血だらけのヒルダにそう言われて俺はその場で膝折れして震えた
抱えたはずのジェットの体はボロボロと砕け砂のように手をすり抜けて地面にばらまかれた
「…ひっ」
顔だけが形をとどめ虚ろな眼から涙をこぼし口をパクパクと動かした
「…アルベ…ルトォ…死にたく…ない…殺さ…ない…で…」
とうとうその顔さえもサラサラと風に崩されていった
「嫌だ…そんな…違う…―うああああぁァアアアァー!!!!」
夢はそこで終わった
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