「兵器は涙を流さない」
ある日
ドイツのある場所で俺は自分によく似た『それ』と戦った
「自分の成れの果てと戦ってる気分だぜ」
『それ』は俺の姿を忠実に再現したものだった。『それ』に感情はなく相手を壊すためだけに動き、破壊だけを求めていた
それはまさしく……『兵器』
あれは、あのロボットは、俺の写し身だったのだろうか
最新式の素材で作られプログラミングされた目的に則し忠実かつ効率的に動く
躊躇などあるわけがない
破壊することだけを重点に動き、その行動の一切を第三者に握られている
俺が…兵器になったら
ヒルダのことやアイツのことも
忘れてしまうのか
この胸に残った僅かな暖かい気持ちも
全て消えてしまうのか
もし俺が兵器になってお前と戦うことになったら
この手でお前を
殺めてしまうのか…
***
ドイツ・ベルリン
小さな借家に男が2人住んでいた
今は真夜中
薄暗い寝室のベッドに1人は横になって隣で寝ていたもう1人は寝ている男の顔を座って見ていた
「…アルベルト」
座って見ている男は不安げな表情をして裸で眠る男の名を呼んだ
「…寝てんの?」
更に男はアルベルトに迫った。長い赤毛が垂れてシャツから白い肌が覗く
(…寝ながら泣く奴…初めて見た)
アルベルトは表情こそ変わってはいなかったが閉じられた瞼から涙が流れ枕を濡らしていた
(…なんで…泣くんだよ…アルベルト…)
男は悲しそうな目をして眠る彼の涙を拭い続けた
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