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どんだけ引きずるんよ アンタ

「そんなに愛してた?」

俺はちょっとイジワルしたくなった

「アンタが好きになるくらいだ、相当な美人だな、きっと気だてもよくて、非の打ち所がねぇんだな」

「…」

「俺も会ってたら惚れるな!きっと」

「…やめてくれ、」

緊張した004の口調

(…ヤベ)

怒らせたと思った

「べっ別に皮肉で言ってんじゃ―」

「…違う」

え?

「…ほ…惚れるとか…は」

004は難しい顔をした

「だ…だよな…恋人盗られるような気分だもんな…」

「…ヒルダに…嫉妬しそうだ」



ちょっとまて

「『ヒルダ…に』?」

004が頷く

「…ヒルダにお前を取られるのは…嫌だな…」

うわ

なにそれ

「ふっ…おかしな感じだな…ジェット」

「え…」

004の表現が和らいだ。彼の目は俺をちゃんと見ていた

「ズルいな、俺は…過去を引きずっておいて…でも、お前が好きなんだから…」

「…―」

ああ、確かに、凄くズルいよ。

でも今のアンタ、すごく


人間らしいよ


「今のアンタが俺は一番好きだ」

「…」

「過去を置いてけなんて言わない、覚えていていい…ただ」

「……」

「俺を見てくれ、今みたいに…俺の好きな、アンタでいてくれよ」

波音が俺の言葉をさらってゆく。俺はただ004の答えを待った

「…でよければ」

やっと話したと思えば小声で、ずいっと顔を近づけた

「聞こえねぇよ」

004が照れてる

「…こんな俺でよければ…す、好きで…いてくれ」

「…あーもーぉっ!」

くそ可愛いオッサンだなぁ!

そんなアンタが、大好きだ


***


日も傾いた夕暮れ

「さて…そろそろ帰るか」

「…まて」

「ん?…―うわっ」

004は俺の腕をつかんで引っ張った

「何だかムラムラしてきた。」

ム、ムラムラ!?

「ちょっ!…なんでそんなことはサラッと言えるわけ!」

004の目つきはさっきと変わっていた

「幸いここは無人島だ。誰も見てない」

「関係あるか!!」

「人前でシてもいいのか、変態だな」

「ちっがーう!!!ってちょっやっあ」

可愛い004はどこへやら、そこにいるのはもはや飢えた狼だった

「おっお助けぇ〜!!」
お助け〜…
助け〜…
け〜…

俺の叫びは虚しく波音にかき消されていった


***


その頃

「…ト、ジェットー?あ、フランソワーズ、ジェット知らない?」

せわしなくギルモア邸を歩き回る009が003を見つけて声をかけた

「…さぁでも帰りは遅いわね。うふふ」

「?」

003は素敵な笑顔で遠くの一点を凝視しながら洗濯物を取り込むのでした。


終わり

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