「君を好きになったのは、」


秋も中頃になり、紅葉がより盛んになってきた

ハラハラと舞い落ちる色とりどりの葉

山中腹では銀杏や紅葉などの広葉樹が色付き、針葉樹も時々緑を添えた

「紅葉狩だー!!」

赤毛の青年が紅の絨毯の上を駆けた

「ってジェット本当に刈っちゃだめだからね!」

つづいて同年代の青年が注意した

「分かってるよ!watchingだろっ」

ジェットと呼ばれた青年はムッとして振り返った

「まぁ…そうかな」

「ジョーここの落ち葉踏むといい音する!」

「どこどこ!」

ジョーと呼ばれた青年は子供のように駆け寄った

2人が紅葉の下、落ちてくる葉と戯れるながらふと遠くから見ているだけの1人に気づいた

「アルベルトーなーにしてんだよー」

「あ?」

アルベルトと呼ばれた銀髪の成年は銀杏から目をそらしジェットを見た

「なにを思い出していたんだい」

ジョーのいきなりの具体的な質問にアルベルトは口をつぐんだ

「……アル?」

ジェットは2人を見て首を傾げた

「そんな大したことじゃないさ。」

らしくないごまかし方にジェットも少し違和感を感じたが、とりあえず、また落ち葉踏みに戻った

(……変わらないのは俺だけか)


***


俺はまだ…過去を追いかけたままだ


『ねぇ…アルベルト…私達ずっと一緒よね』




『あなたの手は暖かかった…』




二度奪われた尊いもの。

もうひとを好きにならないはずだった

また失うとわかっていた


でも

気が付けば、あいつはいつも




一緒にいたんだ


***


ジェットは落ち葉踏みに夢中で後ろから近づくアルベルトに気づかなかった


「ジェット、」

肩に触れようとした瞬間

目の前が真っ赤になった

「!!」


赤はまるで血の色

失ったひとがまとっていた

死の色


「…うあっ!!」

アルベルトは怯えたように身構えた

『カサッ』

「カサ…?」

恐る恐る目を開けると視界にジェットが見えて

その顔は

「何だよ大声出して」

ちょっと呆れているものだった

「え…」

右横には両手いっぱいに持った紅葉をアルベルトにブン投げた後のジョーが立っていた

腕には所々葉が付いていた

「あ゙ぁ!!?」

アルベルトは全身紅葉まみれになっていることに気づいた







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