「神サマ、そん時はよろしく」


俺は一度も

神サマにお祈りをしたことがなかった

『初めて、あなたに祈ります―…』

そう、009を助けに宇宙へ行く最中に

初めて祈ったきり…

だって、失いたくなかったから


009は

ジョーは大切な―…


***


「あ♪ジェーット☆……どうしたの…顔色悪いよ…?」

今は夜。俺は海沿いのテラスにいた

長い時間いたのでジョーが様子を見に来たらしい

手すりに寄りかかる俺の隣に立って顔をのぞき込んできた

テラスの先には月で青白く浮かび上がる砂浜と、どこまでも広がる海が見える

水平線の彼方から波が寄せては返す。海風が少しだけ吹いていた

「…009…大丈夫…長く風に当たりすぎただけだ…」

心配をかけまいと笑ってみせた



ジョーはムッとしていた

「今、ナンバーで呼んだ」

「あ…」

「2人の時は名前で呼ぶ約束だろ」

「…ジョーは2人きりじゃなくても名前で呼ぶじゃん…」

揚げ足とってみた

「それは愛してるから、つい」

マジ顔で言われたから呆気にとられた

「愛してるから…って…かっ簡単に言うな!恥ずかしい奴!」

俺はジョーの言うことにいつも振り回されてる

痛いくらい愛されてるとそう感じる

ジョーはにっこり笑った

「くす、照れてるー可愛いー」

「おっ男に可愛い言うなっ」

「…愛しいジェット…君に出逢えたことを神に感謝しなくちゃね」

「神…ねぇ」

ジョーは言ってはいけなかったことをつい口にしてしまったような顔をした

「ジェットは神様信じてないんだっけ」

「ん?…ん―どうなんだろうなぁ」

俺は考えて首を傾げた。ジョーも首を傾げる

「だってお祈りしたことないんだよね」

ジョーの質問に俺は正直に答えた

「…俺さ…ちぃせぇ頃から考えてたことがあるんだ」

「…なに?」

「もし神サマがいたら…神サマはみんなの祈りに応えたり支えになったりしてる」

「うん」

「多くの人間の願いを叶えているなら…どんなに大変だろうって…」

「……」

「俺がお祈りをしないのはそういうことなんだ…頼りたく…ねぇんだ―…」

「ジェット…」




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