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『…パチン』

照明を消したら何も見えなくなった

上も下もわからない

不安定な世界に取り残されて、ひとりぼっちになった気がした

「…―」

平衡感覚を奪いぐにゃりと空間が傾くような感覚が襲う

引力に任せ体が傾いていく


「ッ!!…ジェット!」

廊下の明かりが開いたドアから入って部屋を照らす

傾た体は004に支えられ、それでもよろけて膝をついた


「なんだ、どうした?…電気まで消して」

「ぇ…ぁ…貧血?」


…あークソ

なんで今日は、こんな事しか言えないんだ…

「…俺に聞いて、どうする」

…もっともだ

「まったく…寝ぼけてるなら部屋戻って寝ていろ。」

「…わりぃ」

「なんなら部屋まで送るぞ」

(…あ)

支えてくれたその腕の感覚は昔とあまり変わらないような…

いや、正直よく覚えていないだけかもしれない

それだけ俺たちの距離は…遠ざかってたんだ

「…久しぶり…だな」

「?」

「そうだよな…そんなヒマねぇもんな」

「ジェット…?」

「なぁ…ハグしていぃ?」

「!」

004はちょっとビックリして

また元の表情に戻って

少しだけ笑った

「…お好きに」

「…へへへ」

あぁ…よかった

004は、ちゃんと

「ここにいるや…」

「何訳の分からんことを…本当におかしなやつだな…」

優しい声が聞こえる

忘れてない。これだけは覚えてる

最初の頃と変わらない優しい声

昔のまんまの、004だ


ちゃんと、いた

…よかった


あんたがいるから、こんなに温かくなれる

胸の中のもっと奥が満たされてゆく

触れる指先から「温もり」が伝わらなくても

「存在している」とゆう事を感じていられる


「…で、どうなんだ」

「え?何が?」

「寒かったんだろ?」

「…寝ぼけてるって、思ってたんじゃ…ねぇの…?」

「…まぁな」

「…」

「で?」

あぁ…もう

「…〜〜!」

「…抱きつくところを見ると、まだ寒いか」

「ううん…嬉しくて」

嬉しくて嬉しくて

「…大好き…」


…温かい

ただ一緒にいるだけなのに

…日常的なこと、隣にいること

一緒に話すこと、指先に触れて

手を握ること

至極、当たり前だと思っていたこと


でもそれは

本当は、すべてが……

愛しくて

………

「なぁ…アルベルト…」

「ん?」

「死ぬなよ」

「…お前もな」



本当は、もう死ぬことなんて

怖くない

ただ、アンタを失うのが


「…泣いてんのか」

「…るせぇ」


たまらなく怖い



終わり

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