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「…結局…俺もアイツと同じこと、しようとした…俺…最低だ…」
002はベッドに座り毛布ごと膝を抱えていた
下は履いていないまま、時折座りが悪そうにモジモジした。
「…アイツって?」
隣に座る009はいつもの表情に…心配する友の姿に戻っていた
「…アルベルト……フラれちまったょ」
002は泣きはらした眼で自嘲するように笑みを浮かべた
「…アイツが俺を好きでいてくれるだけでよかったのに…俺はそれ以上を欲しがったんだ…」
「……」
「アルベルトさ…直前になって泣いたんだぜ…?…そんなん…ムリだろ?」
「…じゃあ、君がここにきたのは…逃げるため?」
002は膝に顔を突っ伏して小さく頷いた
002は顔を上げると009を申し訳なさそうな顔で見た
怒られる前の子供のようだった
「ごめん…お前を利用した…忘れたくて抱かれようとした…仕舞には拒絶して、傷つけた…何もかも中途半端だ…最低だ…」
002は自分を責めた
でも009は怒らず呆れず002を見ていた
「ジェット…」
「………」
009は涙の伝う002の頬に唇をあて優しくキスした
優しく優しく愛しさを込めて
「ジェット…僕じゃ、だめかな」
「…え…」
恨まれても仕方ないようなことをした後に
返されたのは怨みごとではなく切なく願うような優しい囁き
予想していなかった言葉に002は戸惑った
「君が好きだ」
何の戸惑いもない009の言葉に強い光を放つ瞳に002は何も言い返すことが出来なかった
「君が欲しい…全部」
「……ッ」
002は何も言えず頬を赤らめた
「まってるから。君が僕を望んでくれる日まで、ずっと」
002は早鐘のように脈打つ胸を押さえてうつむいた
009の顔を直視出来ず自然と涙がこぼれた
「…………さて、と。今夜は泊まっていくだろ?ベッドはここ使っていいよ。僕はリビングのソファ使うから」
「あっ待っ」
「おやすみ」
009は002を置いて毛布を片手に部屋を出ていった
「……………」
パタリと閉まるドアの音を最後に部屋は静かに波音を称える
(んなん…眠れるわけ…ないじゃんか)
静けさの中に際立つその高鳴る思いは002を戸惑わせた
それでも夜はいつもと変わらず
当たり前に更けていった
終わり
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