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「お前の背中…意外と広いんだな」

「…え」

「借り…出来ちまったな…」

いつになく控えめでしおらしい002に009は戸惑い焦った

「そっそんな…もともと僕のせいで君をこんな目に遭わせてしまって…」

「それもそうか」

002はやっぱりといった風に即答した

「あ…う…ぅん」

「ま、仲間なんだし助け合うのは当然だよな!」

002は1人で合理的っぽいことを言って、さっさと貸し借りの話を終えた

(な…なんだかなぁ…)

009は拍子抜けして、でも002らしいと思って安心した

009がふっと視線を002に戻すと002はジッと009を見ていた

「………」

「…えと…なに?」

しびれを切らした009が笑顔をつくって首を傾げてみる

「…ちょっといいか」

「?」

002はゆっくり起き上がりベッドに長座位で座った

「こっち座れ」

009にベッドの端に座るよう指さした

「え…と…こう?」

009は端座位で002に背を向ける形で腰掛けた

「…また…背中……借りていいか」

優しい静かな声で聞く002に009はドキッとして焦って胸に手を当てて落ち着かせた

「う…うん…いぃよ」

002は返事を聞くと体をゆっくり009に預けた。009の背中に002の長い赤毛が垂れてそれなりの重みと熱が伝わる

「この背中に…俺は助けられたんだなぁ」

009はドギマギしながら背中に002を感じていた

「………」

009は当時002を担いでドルフィン号へ必死に走ったことを思い出た

「…あの時…僕は……凄く怖かった」

「……」

「……き…君を、失うんじゃないかって…大切な仲間を、死なせてしまうんじゃないかって……」

009は思っていることを思っている通り口に出した

「…僕のせいで…誰かが傷つくのは嫌だ…いなくなるのは嫌なんだ……なのに…僕は…」

涙声で自分を責めるように言う009

002はふっと息を吐いた

「ジョー…俺は死んでねぇし…いなくもなってねぇよ…だから…泣くなよ」

002はそう慰めた

背中から聞こえる002の声と言葉は、温かく優しかった

「ありがと…ジェット」

「…助け合うのは当然だろ」

002は009の背中に頬をすりよせて目を閉じてゆっくり体を預けた

009は涙目で幸せそうに笑った

(やっぱり…君が好きだ…)

その笑顔は002からは見えなかった


***


2人のいる部屋の窓からは夜明けと共に暗い青から水色へと変化していく空と顔を出した太陽の光に照らされ輝きを増す世界が見えた

「そろそろ起きようか…ジェット」

009がベッドから立ち上がり振り返ると002は目つきの悪い、いつもの仏頂面に戻っていた

「もうサイボーグに戻る時間だぜ…009」

「…うん」

009は少し残念そうに笑って002をベッドから起こす手伝いをしてダイニングに向かった




傷つき背負い世界のために戦う戦士たち

彼らの新しい1日が始まる



終わり

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