どうか此処から救い出して。
『ヘルプミー』
それはまさに圧迫だった。暗闇の中じゃ目は見えない。壁が迫ってきている様な気がして息も出来ない。開放を求めようにも窓がなければつまりは四方全てが壁で、それを確認してしまってはますます息は出来なくなるばかりだ。次第に、音すら聞こえなくなる。聞こえるのは己の心臓が恐怖のあまりにドクドクと素早く脈打つ音だけで、心臓にすら何か急かされているような感覚になった。兎に角何もかもが己を圧迫していた。怖い何もできない怖い苦しい苦しい怖い怖い怖い。
(助けて)
ふと、声がする。それは助けを求める己の声とは違う声だった。背を丸めうずくまるこの体を、誰かが少々乱暴に抱え上げる。だが、それだけで充分だった。どこからともなく光が部屋に入り込み、その派手な色をした髪を照らす。
自分よりも幾らか大きなその手が、不器用な言葉が、目が痛い色をしたこの髪が、今や全てから己を救い出す命綱だと、少年は安堵の嗚咽を漏らした。
(もうかくれんぼなんてやだ)
(金庫の中に隠れる閉所恐怖症がいるかよバカ)
『ヘルプミー』 END
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