自殺は罪だ、地獄に引きずり込まれるぞ。





『誰かが死んだ日曜日』




 とあるバーに、男が扉を突き破らんばかりの勢いで入ってきた。カウンターを乗り越え、棚に並べられたウイスキーの瓶を開けると、逆さまにして一気に飲み干そうとする。だが、肝心の中身が口の中へ流れ込んでこない。次の瓶も、その次の瓶も同じだった。男は瓶を半分に叩き割り、割れ口から豪快に酒を仰ぐ。が、やはり酒が喉を焼く事は無かった。中身は確かに瓶に入っているのに、どう足掻こうとも男はそれを飲み干す事が出来ない。男は焦った。酒が欲しいと、気が狂いそうになっていた。


 とあるバーに、男が扉を突き破らんばかりの勢いで入ってきた。カウンターを乗り越え、棚に並べられたウイスキーの瓶を開けると、逆さまにして一気に飲み干す。ウェイターや客はその勢いに圧倒され、男を止める事が出来なかった。男は次々に瓶を開け、中身を一気に飲み干していく。だが、男はまだ足りない、まだ飲めていないという様に瓶を叩き割った。中身は全て床に溢れたが、男は亀裂に口を付け、無い酒を求めた。ガラスで口が切れ大量の血が流れても、男は酒を飲み干していく。やがて、男は胸を押さえよろめいた。倒れまいと棚を掴むが、床に溢れた酒で足を滑らせ、どしんとその場に倒れ込む。やがて飲みすぎた酒が逆流し、男の口から溢れだした。目は飛び出し、体は震えている。もうだめだ、とその場にいる者全員が男の命を諦めた。そんな男は、ゴボゴボと酒を溢れさせながら、助けを求めるように呟く。

「殺される、ころさ、れる、ころさ、れ」

 ゴボッ、と最後の息を吐き出し、男は絶命した。店内にいる者は誰も動かなかった。誰から見ても、男は自分から命を絶ったように見える。アルコール中毒者が禁断症状を起こし、狂ったように酒を飲み干したのだと誰もが語った。
 だが、その男の事を笑みを浮かべながら見ていた少年がいた事を、誰も知らない。そしてその少年の足の間で、赤い独特な形をした尾が揺れていた事を、誰も、知らない。

「冥界へようこそ」





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