え?ロスティのことを教えて欲しい?



『ヒントはマグの中に』




 本人に聞けばいいのに……って思ったけど、あの子が教えてくれる訳ないもんね。いいよ、このデリさんが出来る範囲で教えてあげる。ちょうど紅茶を淹れてたんだ、これでも飲んで、さぁ座って。

 さてと……、僕とあの子は幼馴染でね、初めて会ったのは僕が12歳、ロスティが10歳の頃だったかなぁ。同じ学校に通っててさ、あの頃のロスティはすっごく華奢で、誰よりも肌が青白くて、なにより、一番冷たい目をしてた。それが理由なのかどうかは分からないけど、クラスメートにひどく虐められてたみたい。あの子、学校の中でも浮いてて、いつも一人で行動して、痛そうな痣をあちこちに作ってた。そんなロスティを、僕は遠くから見てたんだ。声をかける義理はなかったしね。でも、やっぱりあの冷たい目が気になって、気付いたら帰り道にこっそり跡をつけたりしてたんだ。ふふっ、今思えばストーカーだよね。
 そんなある日ね、帰り道の途中で、ロスティがクラスメートに路地裏に引きずり込まれるのが見えたんだ。僕は見つからないように、そうっと覗き込んでみたら、もー酷いのなんの!殴ったり蹴ったり、髪を引っ張ったり。子供って怖いなぁって、僕も同じ子供なのに思ったよ。でも、今思い返せば、そんなことをされてるのに表情ひとつ変えず、何も言わないロスティの事を、その子たちは怖がっていたのかもしれないね。だから、暴力をふるって安心したかったのかも……。まぁ、いじめっ子達の話はいいや。でね、あー今日も派手にやられてるなぁと思って見てたら、珍しくロスティが何か言ったんだ。何を言ったのかまでは聞こえなかったけど、その途端にいじめっ子たちの勢いがなくなって……そこから、ロスティの反撃は一瞬だったよ。まぁ、どんな反撃だったかはご想像にお任せするとして……。
 動かなくなったいじめっ子達を暫く眺めた後、ロスティは路地裏から出てきた。そこで僕と初めて顔を合わせたんだよ。僕を見て、驚いた顔をしてた。殺そうと思ったんじゃないかな?僕も「あ、まずい」と思ったけど、ここがチャンスだと思ったんだ、ロスティと知り合う為のね。

 ま、僕とロスティの出会い編はこんな感じ。僕も少しだけ子供の頃に"イケナイ遊び"をしてたから、お互いの秘密を共有して、一緒にいることが多くなったよ。あれ以来ずっと一緒にいるんだなぁと思うと、お互い依存しちゃってるのかもしれないね?ふふっ。

 あぁ、そうそう。虐めで思い出したけど、ロスティの身長が低いのは……、あ、本人の前で「身長が低い」なんて言ったら機嫌損ねちゃうからダメだからね。で、あんな身長なのはね、子供の頃の虐めが酷すぎて、あれ以上成長しなくなっちゃったんだ。脳が死にたい、って思っちゃったのかもね。でも、ロスティの心は強かった。初めての反撃以来、ロスティは今まで我慢してたものを吐き出すように攻撃的になったよ。今はあの子もいい年だし、デメリットを見極められるようになったから落ち着いてるけど、この組織に入りたての頃は暴れん坊だったなぁ……。

 今は見ての通り完璧主義でサディスティックなこの組織の最高責任者。前任者を殺したら継続って形になるんだよ。つまりロスティはまた誰かに殺されちゃうかもしれないし、後継者に値しない人には絶対に殺されちゃいけない。あの子はすでに、誰に後継させるか決めてるみたいだけどね。

 さてと、これでかなりロスティの事が知れたんじゃないかな?あ、紅茶全部飲んでくれたんだね、美味しかったでしょ?僕のお手製の"隠し味"入り。ん?あぁ、血を吐いちゃったね。大丈夫、すぐ楽になれるから。ごめんね、ロスティの秘密は僕だけの秘密だからさ。だからゆっくり、おやすみ。




『ヒントはマグの中に』 Fin.



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