「あの、ヴィクスさん」
「オイオイ、"さん"なんてやめろよ。他人じゃねぇんだし」
「えっと、ヴィクス、水中で書類を広げて大丈夫ですか?」
「あぁ、ラミネートされてるから大丈夫だぜ。…でよ、前に起きた2件の事件と、今回の事件の被害者を照らし合わせてみたんだが…」
「なんか分かったの?」
「おう、3人に接点はねぇが共通点はあった。全員全科ありだ」

 ヴィクスは3枚の書類を取り出し、ミシェルたちの方へ向けた。それぞれの書類には被害者の顔写真と、事件の内容などの情報が書き込まれている。一件目の被害者の顔写真を指差し、ヴィクスは説明を続ける。

「1件目の被害者の男は酷ぇアルコール依存症で自分のガキに虐待してた。2件目の女は轢き逃げで、ガキが3人も死んでる。で、今回の被害者の男は性犯罪者だ、標的にしてんのは…」
「分かった!子供だ!」
「おう、正解」
「過去に子供へ危害を加えた人を標的にしているという事は、犯人のナイト・ウォーカーは子供が好きなんでしょうか?」
「そうみてぇだな」

 ヴィクスが頷いた時、ドアが開く音がして、奥からシェイドが姿を現した。

「水槽の前に集まって何をやってる?」
「おぉマスター、聞いてくれ」

 ヴィクスはもう一度説明する。シェイドはそれを聞くと腕を組み考え込んだ末、思い付いたように顔をあげた。

「という事は、犯人であるナイト・ウォーカーを誘き寄せるには子供に危害を加える必要がある訳だな」
「囮というわけですね」
「けど一般人のガキに手ぇ出す訳にもいかねぇし」
「でも囮に出来る子供なんかいる?」

 メアはソファにごろりと寝転がり欠伸混じりに聞く。 目を閉じ寝る体勢に入るが、ある異変に気付き再び目を開けた。

「………何でみんな俺の事見てんの?」
「そりゃあお前、子供で」
「ある程度の危害にも耐えられる」
「好条件な囮はあなたしかいませんね…」
「えぇっ!?やだやだ!俺囮なんてやだ!」
「駄々をこねるな。そうしないと犯人を捕まえる事が出来ないだろう」

 シェイドにそう言われ、メアは不満そうに頬を膨らませる。するとそこに、どこからかクロウが現れた。メアは味方が現れたと思い、クロウの元に駆け寄る。

「なぁクロ、俺が囮なんて変な話だよな!?」
「………」

 何も言わず、クロウはメアを見つめる。そして突然、メアを肩に担ぎ上げた。

「うわっ!おい!クロ!!」
「クロウはてめぇを囮にする作戦に賛成みてぇだぜ?」
「クロウ、ナイト・ウォーカーが現れやすい場所を探して案内してくれ。メアは担いだままだ」
「僕も一緒に行って良いですか?」
「勿論だ。だが気を付けろ」
「くそー!クロの裏切り者ぉー!!!!!」


 1 2 3 4 5 6 7


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -