本屋に戻りドアを開けると、満面の笑みでメアが出迎えた。

「おかえりシェイドさん!あれ?ミシェルも一緒だったの?」
「はい、丁度シェイドさん達が出掛けるときに鉢合わせたので連れていってもらってたんです」
「じゃあさ、帰ってきた事だし遊ぼう!」

 ミシェルの腕を掴み、メアはぴょんぴょんと跳び跳ねる。が、その頭をシェイドは軽く叩いた。

「仕事が終わってからだ。クロウから布は受け取ったのか?」
「あ、うん。さっき渡された!」

 袋に入った布を取り出し、まじまじと眺めた後は鼻を近付け臭いを嗅ぐ。最後に布を口に放り込み、咀嚼しながら話し出した。

「うーん…火を点けた奴はそれを悪い事だって思ってないみたいだよ。逆に【燃やさなきゃいけない】って思ってるね」
「義務だと思っているのか…誰かから脅されていたりするか?」
「うーん…それは分からないなぁ…」

 ゴクン、と布を飲み込み、メアはソファに寝転がる。ぽかんとしているミシェルを見上げ、首を傾げた。

「何にビックリしてんの?」
「あ、えっと……、火について詳しいんですね」

 実際の所は布を食べてしまった事に驚いていたのだが、そこを追求しても納得できる答えは返ってこないだろうと思い、ミシェルは聞いた。すると、メアはおもむろに手の平を差し出す。その直後、手の中でボウッと火が巻き起こった。それは手の平サイズの小さな火でしかないのにも関わらず、あまりの熱さに顔を背ける。メアが拳を握ると、ジュワッと音をたて火は消えた。

「俺、火を操るのが得意なんだ。火の事ならなんでも分かるんだぜ!」
「なるほど…そういう事だったん、」
「おいメア!火ぃつける時は事前に言えっていつも言ってんだろ!」

 ヴィクスの怒鳴り声が、ミシェルの言葉を遮った。水槽の底からガラスの前へと浮上した彼は、水槽内の壁に掛けられた水温計を指差す。

「見ろ!3度も熱くなっちまった……お、ミシェルじゃねぇか。来てたんだな」

 ミシェルの姿が視界に入り、ヴィクスは不機嫌な顔から笑みへと表情を変えた。ミシェルは会釈を返す。

「マスターと一緒に現場に行ったんだってな。どうだった?また丸焦げか?」
「はい…現場にご遺体は残っていなかったのですが、前に起きた2件と同じだと言っていました」
「うーん…」

 唸りながら、再びヴィクスは水槽の底へと潜っていった。すぐに浮き上がってきた彼の手には書類のはさまったファイルが握られている。

「前の2件と今回の事件を比べてみたんだけどよ…ん?そういやぁマスターはいねぇのか?」
「シェイドさんですか?………あれ?さっきまでいらっしゃったんですが…」

 部屋を見回しても彼の姿は無い。仕方がない、とため息を吐き、ヴィクスはファイルを広げた。


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