地面には生々しく焦げ跡が残り、被害者が倒れていた場所にはテープでその形を示している。シェイドはその焦げ跡を一瞥しただけで、すぐに視線を上げ現場をざっと見渡す。そして壁際に置いてあるゴミ箱に近付いた。ミシェルは邪魔をしないよう少し下がってその後を追う。

「ギデオン、犯行は夜だな?」

 少し声を張り上げ、シェイドは聞く。ギデオンは片手を上げ、おー、と肯定の意を示した。

「夜だと何か分かるんですか?」

 邪魔をするまいと様々な疑問を無理矢理飲み込んでいたミシェルだったが、ついに堪らなくなり聞いた。シェイドは迷惑そうな顔をせずに答える。

「あぁ。俺は"影の記憶"を読むことが出来る。誰かの影が、何か物などの影に重なると、その物の影は人の影の動きや形を記憶するんだ」
「でも、犯行は夜ですよね?影なんて無いんじゃ…」
「影が無くなるなんて事は無い。夜、闇に紛れて影は見えないが、その闇のおかげで全ての影は繋がる事になる」

 そう言うと、シェイドはゴミ箱の影を踏む。暫く黙り込み、あぁ、とため息を吐いた。

「被害者は突然発火したようだ。人間に出来る犯行ではないな」
「では、ナイト・ウォーカーの仕業ですか?」
「あぁ、恐らくはな」
「どうやって見つけるんです?」
「普通、生き物が死ぬとその魂は地獄か天国に送られるが、何か強い未練があれば魂は境目でさ迷う事になる。その未練を見付けて、もう一度犯行を起こす様に仕向ければいい」

 そう言うと、シェイドは物証を探している検視官に声をかけた。

「被害者の焼けた衣服をくれないか。少しで良い」
「あぁ、それなら先程回収しました…これです」

 そう言って、鞄の中からビニールの袋に入れられた切れ端を手渡す。それを受けとり礼を言うと、シェイドは辺りを見回した。

「クロウ、出てきてくれ」

 すると、太陽が雲に隠れた訳でもないのに路地が少し暗くなった。そして、初めてクロウと出会った時と同じ様に壁にぽっかりと暗い穴が開き、そこからズズ、とフードを深く被ったクロウが姿を現す。警察は皆、異様な光景に小声で何かを囁きあった。ミシェルが振り返ると、ぴたりと会話を止め作業に戻る。

「クロウ、これをメアに見せて来てくれないか」
「………」

 シェイドの頼みに、クロウは一度頷くと袋を懐に入れ、再び闇の中へ姿を消していった。その後ろ姿を見届けると、シェイドはギデオンを振り返る。

「俺たちは退散だ。もし何か分かった事があったら連絡をくれ」
「おぉ、了解」
「ミシェル、帰ろう」
「はい」


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