強制睡眠命令
すごく幸せな夢を見た、心が温かく、大きくな何かに優しく包まれるような、とても心地がいい夢……。
「んん…」
×××は微睡みながら、ベッドの中でもぞもぞと身じろいだ。目を開けるほどではなく、もう一度眠りにつこうと、横にある温かい"壁"へ身体を寄せる。ゆっくりと上下するその"壁"にペタリと手を触れたところで、ふと違和感に気付いた。
なぜベッドの中に壁が?
「…よォ、おはよーさん」
「……〜ッ、!!?」
目の前にあるその顔には充分に見覚えがあった。ファンとして追いかけている相手、そして自分の上司ーーミミックが笑みを浮かべながら自分を見下ろしていた、それも裸で。
その胸板に、×××は抱かれるようにして添い寝していたのだった。
×××はガバッと身体を起こすと、自分は衣服を身につけていたことにひとまず安堵した。
「こっ、!こんなところでなにしているんですか……!?」
「アァ?そりャアこッちの台詞だッての…ココは俺の部屋、俺が寝ててもなァンもおかしくねェ。テメェが寝ぼけて俺の部屋に迷い込ンで、挙げ句の果てにベッドで勝手に寝てたンだ」
フワァ〜、とあくびをしながら、ミミックはあっけらかんと言う。×××は未だにドキドキとうるさい胸を押さえてパニクる頭を整理していた。つまり×××が先にベッドで眠っていて、それを気にせずに添い寝をしたということ、夜通し。しかも自分が起きる前にミミックは起きていた。つまり、
「あの、ミミックさん」
「ンァ?」
「わ、わたしの寝顔って……」
「寝顔?アァ、見たゼ?見ながら寝たし、起きてもまだ寝てたからしばらく眺めさせてもらッた。幸せそーに寝るよな、オマエ」
クックッと笑いながら言うが、×××は今すぐに羞恥で死んでしまいたいと心底思った。
そんな×××の胸中を知らず、ミミックはこちらを向いて、枕に頭をあずけながら問う。
「×××、テメェ今日非番だッたろ?」
「え?あ、あぁ、はい。休みです」
「だッたらチョードいい、ホラ」
ぼふぼふ、と自分の隣叩く。
「??なんですか?」
「俺も今日は休みでよ、抱き枕になれ」
「へ、っ!?」
「イイから早く」
「わっ、ちょ…!!」
グイ、と腕を引かれ、半ば無理矢理横にされた。頭を抱くように腕を回し、ポンポンと撫でる。
「え、え!?本気ですか!?」
「こッちのが良く寝れンだよ。じャ、オヤスミ、×××」
「お、おやすみ、、なさい、、、」
(どうしよう、これ、腕枕だ)
こんなの眠れるわけがない、と×××は心臓の音がバレないように願いながら、無理矢理目を閉じた。
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