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・貴女side
「伊佐敷せんぱーい!購買にラスト1冊あったんで買ってきましたよ!」
お昼休み。
元気な明るい声で伊佐敷を呼ぶ声がクラス中に響き渡る。
それに伊佐敷は一瞬で、誰よりも早く反応し、ガタッと音をたてながら椅子から立つ。
伊「沢村テメェ!声でけぇんだよ!!」
沢「わ!スンマセン!!」
ズカズカと沢村、くん?と言う男の子の元へ歩いていく伊佐敷。
屈託のない可愛い笑顔から、急に強ばる表情。
…可哀想だけどなんだか可愛い。
母性本能が擽られるってこんな感じなのかな。
っていうか
『…だれ?』
小「野球部の1年。」
『へー、入学したての一年生が、よくもまぁこんなに堂々と3年の教室に来れるもんだわ』
小「あいつはそーゆーやつだよ。だってあいつ、まだ中3の時に東先輩に楯突いたやつだから。」
『え!あの東先輩!?』
つい一ヶ月ほど前に卒業し、プロ野球選手となった1学年上の野球部の先輩、東先輩は割と有名人で。
もちろん全然関わりの無い私も、どういう人かは知っていた。
すっごいなぁ。
伊佐敷と沢村くんと言う強心臓の持ち主を眺め、ふと小湊に視線を移すと、同じようにニコニコしながら揉めている2人を見つめる小湊の横顔が見える。
『小湊って後輩のこと好きだよね』
小「は?」
『えっ、だってさ…誰だっけあの人…倉持?くん?のこととかよく話してるじゃん』
小「…そう?」
『うん。後輩とか嫌いそうなのに意外すぎる』
小「別にそんなことないけど」
まぁ、使えるのは確かだよね。
なんて、S顔で笑う小湊。
いや、アンタが言うと冗談に聞こえないよホント。
そんな話をしている間に、伊佐敷が帰ってくる。
そう言えば、なんか買えたって言ってたな…。
こいつも後輩パシらせてんのか。
野球部の上下関係こわっっ!!
『伊佐敷〜なにそ…少女漫画…?』
伊「あ!テメェ勝手に見んじゃねぇ!!」
『え!ちょっと待って、それ後輩に買わせたの?』
伊「うるせぇ!!つか声でけぇんだよ」
コソコソとブレザーの内側に隠そうとしている奴のブレザーを引っ張りそれを見る。
その瞬間伊佐敷は顔を赤くして動揺してる。
そんな伊佐敷に私は我慢出来ず、吹き出した。
『えぇっ…伊佐敷ってそんなの見るの…っ』
伊「テメェ…」
『いやっ、好みは人それぞれだしね…!別にいいと…ブフッ』
伊「笑ってんじゃ……ねぇー!!!」
だって、この顔で少女漫画って…
ギャップってものがありすぎるでしょコレ。
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