・貴女side



「あー、あの子顔フツーじゃね。」

「けどスタイルいーじゃん。」





え、え…。
ちょっと待って。

……男子が、恋バナしてる……んだけど。



日頃から男女別で行なっている体育の授業。
今月の科目が女子はテニス、男子はサッカーのはずだった。

予鈴がなる頃にはテニスコートに移動していたが、まだ冬の寒さが若干残る春の季節。
待ち時間のことを考えると流石に半袖短パンでは我慢出来ず、教室までジャージ取りに来たんだけど…

そういえば、男子の体育担当の先生が今日は不在って言ってたな。
恐らく教室で自習になったのだろうと大方想像は付くけど…

だからって恋バナするか!?
流石にそんな色恋話で盛り上がっている教室には入れない!!!

けれど正直、興味があるのは事実で。

息を潜め、先程よりドアとの距離を近付け、こっそりと耳を澄ます。





「小湊はいなさそーだなー」

「いやでもこーゆー奴に限って、だろ」

小「オレは別に」

「あ!わかった!あれだろ、野球部のマネのさ藤原貴子!すっげぇ美人だし胸あるし、いいよな〜藤原」





藤原貴子、知っている友達の名前が聞こえ流石に驚く。
貴子ちゃんと言えば、顔よし性格よしスタイル良しの三拍子揃った完全無欠のスーパーガール。
女子の私からしてもあの子がモテるのは納得できる。

おまけに同じ部活のマネージャーと来たら、惚れない方が不思議なくらいだ。

いやいや、でも流石に…。

2人が並んでいる姿を想像してみたが、想像できなすぎる。






小「まぁ良いと思うけど。オレのタイプではないかな。
それに、藤原のこと好きなのは純だよ」

伊「はぁ!?」

「え!まじかよ!」

伊「何言ってんだよ亮介!ちげぇわ!!」





誰目線でタイプの話してんだコンニャロ。
なんて思いながらも、何故か浮かんでいた小湊が貴子ちゃんに振られる姿が消えて安堵の溜息を溢す。
いや失礼だ、良い加減にしろ。

しかし新たな事実発覚。
うわ、まじか。あのヒゲ犬が…。

でも確かに伊佐式ってミーハーっぽいもんな…
いやこれは2人とも馬鹿にしてる、良い加減にしろ私。





「つーか結局、小湊はどうなんだよ」

「どーせいねぇだろ」

小「そんなことないよ、オレだって男子高生だし」

「まじか!誰だよ!」

小「て言うか、普段のオレの態度でわかんない?」





…?
小湊って好きな人いるんだ…くっそ意外。
普段の態度って、割とよく小湊といる私でも全然わからないほど、小湊ってそんなに態度に出す奴だっけ。

教室からは「まじかよー!」なんて、騒ぐ男子の声が聞こえる。
え、わかったの皆。

だれ、だれだ…





「ちょっと結衣!」

『!』





もうちょっとで小湊の好きな人の名前が聞こえそう、とウキウキしながら、更に扉にぐいーっと耳を押し付けた瞬間、大きく私を呼ぶ声が聞こえた。

振り向くと廊下を小走りしてくる友人。





『し、しーっ!』

「え?えぇ?」





そんな大声を出されては男子にバレる、聞かれてたのがバレたらまずい、と咄嗟に指を口元に持ってきて声のボリュームを下げさせる。
友達は戸惑いながらも、反射的に自分の口を両手で抑えた。

ちっ、せっかく小湊の弱みを握ろうとしたのに。

そう思いながらも、ずっとハテナを浮かべている友人の背中を押しながら教室を後にした。





『なに?』

「なにって…先生怒ってるよ。いつまで戻ってこないんだって」

『あ、忘れてた。』





話を聞くことに夢中になってたけど、そう言えば授業中だったわ。
結局ジャージも取って来れなかったし。

…恨むぞクソ男子共。




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