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去年の甲子園、夏の準優勝校という大阪桐生高校との練習試合。

見るからにガタイの良い同世代に圧巻しながらも、試合は始まる。

一年生の降谷君は初回であっという間に3点を取られ、桐生打線が止まらない。

強烈な打球が飛び、降谷君の横を抜け、センター前に行くかと思われたそのボールは、颯爽と軽快に横飛びした小湊のグラブに収まる。
そのままグラブトスで倉持君に渡り、結果ダブルプレー。





『うわ、うま』





思わず言葉が溢れる。
試合をしている小湊を見たのは初めてだったけれど、素人目で見ても、小湊の野球センスが良いのが分かる。

こういうところも後輩に慕われている要因なのかな。
…ていうか、合宿の疲れがあるのになんであんな動きができるの?化け物なの?

そう思いながらも、ついついピンク色の髪をしたアイツを9回終了まで目で追ってしまっていた。





「ええなぁお前ら5人もマネがいて」

「うちなんて怖がって誰も入ってこんで」

「しかもめっちゃ可愛いし」

『いやぁそれほどでも』

小「お前のことではない」

『おい』





結果桐生との試合には敗れたものの、選手にとっては得たものは大きいようで、清々しい表情を見せる。

桐生の選手達を送るべく、部員全員で見送りに出る。
桐生の人たちは見かけによらず良い人らしい。

お世辞を真に受ける私に、小湊の辛辣な一言が刺さる。
やめろよ、冗談だろ。





「一人ぐらいくれよー」

伊「じゃあこいつやる」

『おい!なんなのお前ら!?』





大阪人のノリでそんなことをマネージャーズに言ってくる桐生の方に、伊佐敷が私の背中を押す。

本当にこいつらの私の扱いどうなってんの?





「あんたかわええのになぁ」

『もっと言ってやってくださいよ』





多分同情して言ってくれた桐生の方に涙が出そうになってくる。
もっと言ってくれ。





そんなこんなで私の短期間マネージャー業が幕を閉じた。





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