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・貴女side



「何してんの、こんな時間まで」

『小湊…』





扉を閉め、青心寮を後にしようと足を進める。
暗い道が続く中、自販機の灯りが見えてきたと思ったら人影も目に入る。

顔が見えたと思ったら、よく知っているようで知らない面を沢山持っていた小湊だった。

先程までの事を簡潔に話すも、奴は興味が無さそうにふーんと答える。
…そっちが聞いたくせに。





小「行くよ」

『えっまさか小湊までこれから私の事こき使う気…!?』

小「馬鹿じゃないの、明日も早いんだしさっさとして」

『え?』

小「駅まで行くんだろ、送る」

『えぇ!?』





えっなに!?何を企んでる!?
怖いんだけど!小湊が優しいとか気持ち悪いんだけど!!

つい口からそんな言葉がこぼれ落ちそうになるも、咄嗟に口を抑え我慢する。

小湊の優しさの気が変わらないうちに、さっさと歩いていく背中を追いかけた。





小「随分焼けたね」

『え?あー日焼け?ほんと、日焼け止め追いつかないよー。見てこの日焼けの後!』





すっかり暗くなり、街灯も人通りも少ない帰り、小湊と2人並んで歩く。

今までインドアだった私は、体育の授業と通学の時日焼け止めを塗るぐらいで、一般的に言えば色白であったのに、この数日だけで腕も顔も、出ているところはすっかり真っ黒になってしまっていた。

笑いながら制服の袖を捲って見せるも、小湊はふーん、と目をそらす。

なんなんだよ、さっきから。自分で言って来たくせに。





『それにしても小湊って野球うまいんだね!』

小「は?」

『私野球とか全然知らないし興味もなかったけどさ!なんか小湊のプレーって見てる人を惹きつけるっていうかさ!見ていてすごい楽しいんだよねー!』

小「あっそ」

『えっ照れた?』

小「生意気」

『い”っだだだ!すみません…』





何よ、ほんとのこと言っただけなのに…!
ていうか、褒めたのに!!

まぁ、照れ隠しだと思って許してあげるけどさ!





小「お前は危機感がないんだよ」

『は?』

小「易々と男の部屋入るとか考えらんないし、簡単に肌とか見せんな」

『は??』





頭を鷲掴みされていた力が緩まり、するりとその手が頬を撫でる。

なっ、なに…!?





『あーーーーー!ここまでで大丈夫!!!じゃ明日も頑張りましょーーー!!!』

小「うるさ…」





小湊の顔を見つめると、妖のようななんだが色気を含んだ表情で。
背中がぞくりと震える。

あんな小湊、見たことがない。

咄嗟に変な空気を変えるように両手をあげ、小湊の手を払い除ける。
無駄に大声をあげ、残り少ない駅までの道を走り出した。




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