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・貴女side



『性格わる…』

倉「何言ってんすか」

『小湊だよ!春市君あんなに頑張ってんのにさ!あんな突き放すような言い方しなくても良いじゃんね!』

倉「亮さんはそういうのじゃ無いんですって」





毎日毎日、ハードな練習。
見ているこっちがしんどくなる練習量に、流石に選手達もガタが来ている様子。

…とは言ってもそれは、春市くんはじめ一年生だけのようだけど。

そりゃ一年生なんだからあんなハードな練習ついていけない方が普通じゃない!?
むしろこなしてる方が化け物じゃない!?

なのにちょっとミスした春市君を、小湊は刺々しく、そして嫌味ったらしく攻撃する。

いくら兄弟だからと言ってもさ!
そう言うのって何!?倉持君、小湊に毒されてない!?





伊「おー琴原」

『お疲れー』





野球に対して真摯に取り組む普段とは違う小湊と、相変わらず毒舌で嫌味な小湊と。
知っている姿も知らない姿も、この短期間に見せつけてくる小湊に、戸惑いながらも合宿三日目を終え、筋肉痛と戦いながら制服に着替える。

更衣室から出て、マネージャーズから一緒に帰りましょうと誘ってもらったが、ハンカチをグラウンドに忘れてきてしまった事を思い出し、先に帰ってて、と声を掛けグラウンドへ戻る。


ハンカチをポケットにしまい私も帰ろうと寮を通って近道しようとすると、後ろから伊佐敷に声を掛けられる。
見たところ、もうシャワーでも浴びたのだろう。





伊「まだいたのかよ」

『もう帰るけど』

伊「他のマネは?」

『先帰ったよー』

伊「じゃあちょっと付き合えよ」





じゃあってなにさ。
そう思いながらも、まあいいかと伊佐敷の後ろを着いて歩く。

しばらく歩くと、同じ青い扉が続く一つの扉の前で立ち止まる。
扉の横にある表札には、伊佐敷という名前が記されていた。





『え、いやいや、いくらなんでもそれは無理よ!?』

伊「あ?何が」

『そりゃマネージャーのお手伝いはすると言ったけど!流石に部員の性処理のお手伝いは無理だからね!?』

伊「何気持ち悪ぃ勘違いしてんだテメェ!!!」





まさか部屋に誘われるとは思わず、嫌な予感がしてきてしまい。
なんかそういう話聞いたことなくも無いような気もしなくも無いけど、流石に無理!!!

そう思い、キッパリと拒否したら何故か殴られる始末。
え…勘違い…?

そう思い、叩かれた頭をさすりながら顔を上げると、伊佐敷が開いた扉の先には、部員が何人か集まっていた。

え。





伊「合宿の時は普段通いの奴らも寮に泊まるからよ。こうやって集まって過ごしてんだ」

『なんだ…紛らわしいことしないでよ』

伊「普通思わねえだろ!つーわけで、罰として足揉め」

『は!?私帰る所なんだけど!』

伊「しらね」





そう言いながら背中を蹴飛ばされ(酷い)、フラつきながら中に入ると、結城君と沢村君は将棋をやっていて、増子は寝ていて、倉持君や中田君はゲームをしていて、降谷君はぼーっと突っ立っている。何これカオス。





伊「ほら、早くしろよ」

『それが人にものを頼むときの態度かな!?』





命令口調の伊佐敷に腹が立ちつつも、ここで文句を言っていてもどうせ逃してはくれないと分かっているので、大人しくうつぶせに寝っ転がっている伊佐敷の横に座る。





伊「弱ぇ、もっと強く」

『これでも100パーセントで押してるんですけど…!』





怒りのまま思いっきり足を押してやったが、奴には一ミリも効いていない様子で。

そもそも私は女子なわけで、おまけにここ数日の疲労で私の握力は無いに等しい。





伊「もうお前解雇」

『なっ!…降谷くん!やっちゃって!』

降「…はい」

伊「痛ってぇなコラ!もっと優しくやれよ!」

『ナイス降谷君!』

伊「テメェはさっさと帰れ!」

『ひどっ!』





帰ろうとしていたところ引き止められ、パシられたと思いきやさっさと帰れと言われる始末。

ひどすぎる。





『はいはいお疲れ様でしたー、野球部の教育どうなってんだほんとに。』

伊「あ?なんか言ったか」

『いえ、何も…』





あんな教育者(片岡先生)の下で生活しているくせに、どういう教育されたらこんな性悪生まれんだよ、小湊といい。
ボソリと呟いたら聞こえていたらしく、睨まれたので大人しく黙る。





降「近くまで送ります」

『えっいいよいいよ!降谷君はゆっくり休みな!?』

降「でも遅いんで…」

『ただでさえこいつらの相手で疲れてるでしょ!?大丈夫!』





一年生で巨体の無愛想な降谷君は、こう見えて優しいらしい(失礼)

気にして送ってくれると言うが、練習でバテている姿を見てしまったり、練習後もこのように先輩の相手をさせられている姿を見てしまうと、甘えたくはない。

でも、と心配してくれている降谷君にお疲れ様、と声を掛け、部屋を後にした。





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