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・貴女side



『えー、合宿間の短い期間ですが、どうぞよろしくお願いします…』

「「しゃす!!」」





圧がすごい、怖い。

あっという間に合宿は訪れてしまい、今日は初日。

片岡先生からの許可を得て、よろしく頼むと言う言葉まで頂いてしまった。
…やっぱ部活だと雰囲気違うな、片岡せんせ…監督。

合宿までの期間、毎日貴子ちゃんがマネージャーのいろはを教えに来てくれ、なんとなく仕事内容も覚えた。


朝のミーティングが終わり、早速選手たちは各々自分の練習場に移動する。
よし、私もドリンク作りに行こう!と気合を入れ、歩き出す。





「ちす」

『あ、倉持君。よろしくねー』

倉「亮さん達に言われたんすか?」

『大正解、よく分かったね』

倉「まあ、なんとなく」





倉持君ってこう見えて結構周り見て、察するのがうまいよな、と失礼ながら感心する。
人ってやっぱり見た目で判断しちゃいけないね。

大変だと思うけどお願いします、と言いながら去っていく背中を見てさらに感心する。
うん、彼は可愛い後輩認定。小湊から守ってあげよう。




マネージャー業は想像していた以上にハードなもので。
ドリンク作りに栄養補給食の準備、洗濯して干して畳んだと思ったら、また洗濯して。
おにぎりを業者レベルに作ったら、ボール出しにボール拾い、ボール磨き。
備品チェックと買い出し、掃除、怪我の応急手当て、エトセトラ…。





『何これしんど…てか暑…』





ゼーハーと息を切らして必死に他のみんなに着いていく。
6月なのにこんな暑いの…。

そもそも運動不足な上に、こんな初夏の季節に外を走り回った記憶など無いに等しい私にしたら、こんなにしんどいものなんてない。

そう思うも、グランド内を動き回っている選手を見ていると、簡単に弱音を吐きたくなくて。


運動部って、うちの野球部ってこんなにすごいんだ…。

この前プリントを届けに来たときはチラッとしか見なかったけど、改めて見てもすごい。
素人目で見ても分かる。

人ってこんなに動けるんだ、と思うほどの運動量。
同じ高校生が、こんなにも普段と違う生活をしているのかと思うと、尊敬通り越してもはや怖い。





小「これ作ったの琴原だろ」

『えっ、なんで』

小「ダントツで形が丸い」

『人が真心込めて作ったおにぎりに失礼な!!』





今日一日野球に取り組む直向きさを見ていて、小湊の株が少しだけ上がったと言うのに、奴は簡単にそれを打ち崩す。

暗くなってきたからもう練習はおしまいだと思いきや、この後はボールを使わずに走り込みがあるらしい。
その前に軽食として、私たちが一生懸命作ったおにぎりにケチつけてきやがる!!私の作ったおにぎりに対してだけど!





『文句あるなら食べなくてよろし』

亮「別に文句は言ってないでしょ、味は上手いし」

『えっ!ほん…』

亮「まあおにぎり不味く作る方が難しいでしょ」

『ほんとムカつくーーー』





素直にありがとうも言えんのかあいつは!?




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