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・春市side



『お願い!』

春「嫌です!」





そんな葛藤を繰り返すこと数十秒から数分。

彼女は兄貴やその周りの先輩方からよく名前を聞く先輩。

背が高いのが悩みと耳にしたこともあったけど、スラッとしていて可愛らしい顔立ちに少し天パのかかったフワフワの髪。
…普通にしていれば可愛いのに。





『お願い!一瞬だけ前髪上げてよ〜』

春「絶対嫌です!」

『なんでー?絶対見せたくないって訳じゃないでしょ?』

春「そうですけど、面と向かって言われて前髪上げるのは抵抗ありますよ」

『あ、じゃあ横に流すだけでいいよ。目が見えた状態の顔が見たいだけだから』

春「そういう問題じゃないんですけど…」





真面目な顔してお願いがあると言われ、何事かと思ったら本当にくだらないお願いで。

ていうか、もともと恥ずかしいから前髪伸ばしてるわけで…





『春市くん目出したら絶対カッコイイよ〜この間ちらっと見えちゃったもん』





そう言いながらジリジリと近付いてくる琴原先輩。

うわ、その手の動き、絶対僕の前髪分けようとしてる。





春「ちょ、琴原先輩!やめっ…」

『へーき、へー…いっ!』

春「!?」





あと数センチで僕に触れそうな距離まで来たところで、ヒョロヒョロと床に倒れ込む琴原先輩。

下に視線を移すと痛そうに頭を抱えている先輩、それから目の前に視線を戻す。





春「…兄貴…」

亮「うちの弟誑かさないでくれる?」

『…変なこと言わないでくれるかな...』





床に倒れ込む琴原先輩の後ろには、右手をチョップの形にした兄貴の姿。
あ、黒いオーラが出てる。





亮「大丈夫か?春市」

春「あ…うん」

『小湊のチョップホントに痛いんだけど…』

春「だ、大丈夫ですか?」

亮「大丈夫だよ、こいつは。自業自得」





頭を擦りながら立ち上がる琴原先輩、ほんとに痛そう。
兄貴の言う自業自得という言葉も否定出来ないし、正直困ったのも本音だけど、兄貴のチョップは多分誰よりも受けたから痛さは本当にわかる。





『…小湊悪魔…春市くん天使…』

亮「春市くん、?」

春「あっ、いや…」





僕が名前で呼ばれたのが癇に障ったのか、俺にもチョップしてきそうな勢い。
ただどっちも小湊だと分かりにくいからそう呼んでるだけだろうに…

兄貴、ホントにわかりやすい…




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