11
*貴女side
小「できた。」
『え、見して。』
数十分、黙々と絵を描く小湊と、黙って正面を見ていた私。
終わったと言うことで、どんなもんだと画用紙を覗き込もうとすると咄嗟に隠される。
『けち』
小「早く、お前の番」
早くしろと睨んでくる小湊に、別にいいじゃんと思いながら渋々鉛筆を握る。
ほんとに絵とか苦手なんだよなぁ…
そもそも画家になる訳でも芸術家になる訳でもないのに高校の必須科目に美術とか必要?
しかも揃いも揃って美術の先生って変な人ばっかだし。
いや、これは失礼だ、私のセンスがないだけで先生を悪く言うのはやめよう…
と、1年、2年と美術の成績が最悪だった私にとって、美術という科目は疎か、先生まで嫌いになってしまった私にとって最悪な時間。
心の中愚痴を溢しながらも、やるしかないと描くこと数十分。
「ぎゃはははは!これのどこが亮介だよ!」
『!?』
小湊と画用紙を見ながらにらめっこをし、我ながらピカソ並みのセンス…と苦笑いをしていると、背後からなんともゲスい笑い声が聞こえた。
びっくりして咄嗟に画用紙を自分で隠しながら振り返ると、そこには目に涙を浮かべながら爆笑している伊佐敷がいた。
『ちょ、失礼な!』
伊「いやこれはねぇだろ!見てみろよ亮介も」
『ま、まってストップ!うん!書き直すから!』
人の絵を見て爆笑してくる伊佐敷に失礼だと声を荒げるも、私でもこんな絵を描いている奴がいたら笑ってしまう自信があり、なんとも言えない。
その瞬間、抱え込んでいた画用紙をバッと伊佐敷に取られ、小湊に渡る。
これは笑えない、小湊からオーラが見える。
小「やり直し」
うそん…こいつ破りやがった…。
← →