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*貴女side



「今回は2人1組でペアになってお互いの肖像画を描いてもらいます」





ペアは先生が適当に決めました、と言う先生の言葉にブーイングの嵐。
高校生の美術ってそんなもんやるんだ。

美術、特に人物画とか苦手なんだけど…。

めんどくさ、と悪態を吐き、溜息をこぼしながら黒板の方へ向かい私の名前を探す。

自分の名前を見つけ、ペアになる隣の人物の名前を確認する。





「うわ、最悪」

『こっちのセリフなんですけどね…!』





恨むぞ先生。
名前を見た瞬間、私の心の声が漏れたかと思ったが、どうやらそうではなく、声が聞こえた方に目を向ける。

周りを見ると男同士女同士はもちろん、男女ペアも普通にいる。

けど、けどさ。





『なに?小湊そんなに私と関わりたいの?』

小「むしろ縁切りたいんだけど」





目の前に座る小湊を画用紙越しに睨む。

はぁ…。
まぁ、文句言っててもあの先生がペア変更を許可する訳ないし、何もやらなくても成績が下がるだけだ。
もう一度溜息を吐き鉛筆を握る。

正面を向き直すと対象の彼はもう描き始めている様子で、
少し下に顔を向けている小湊をじっと見つめる。





『ちょっと小湊前向いてよ』

小「今描いてんだけど」

『私もだから、顔見えない』

小「じゃあ最初琴原モデルやってよ、そっちの方が早い、揉めるより」

『えぇ…』





なんで私が、小湊に指示されるのも何か腹立つ、なんて思い反抗しようと思ったが、それもそうだな、と納得することしか出来ず。
鉛筆と画用紙を挟んだ画板を横の机に置き、正面を見る。

小湊はチラチラと私と画用紙を交互に見る。

…暇だ。





小「琴原って二重なんだね」

『うん』

小「睫毛、意外と長い」

『どうも…』

小「そんで眉毛が細い」

『は、はぁ…』





今は目元を描いているのか、いちいち特徴を言いながら描く小湊。
そしていつもより鋭く感じる小湊の視線。

うわ、なんかこんなにじっくり見られていると思うと…





小「ちょっと、手で顔隠さないでよ。」





いくら小湊が相手だと言っても、友達、ましてや男友達にこんなにまじまじ顔を見られる経験なんて人生でしたことがない。

…素直に恥ずかしいです。




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