第4話
・貴女side
どんどん近付いてくる東堂の顔。
!?ほんとになに!?
『っちょ!何してんの東堂!』
腕で拒もうとしてもびくともしない。
東堂って見た目かなり細いからって油断してたけど、流石に強豪校の運動部。ましてやレギュラー。
鍛え方がそこらの男子とは違うのだろう。
咄嗟にしゃがみ込んで回避しようとしても、するりと東堂の足が私の足の間に入ってきて、それも叶わず。
っていうか本当に、この状況、冗談じゃ済まされない。
「お前は男子校生を分かっていないようだな」
そう言いながら段々と近づく東堂の顔。
そして更に際どい位置まで上がってくる東堂の足。
流石の私でも、この後どんなことをされてしまうのか想像できてしまう。
『ねぇ!東堂分かった!!ごめんってば!』
取り乱しながら東堂に訴えかける。
声がデカ過ぎた、隣の部屋に聞こえてバレるかもしれない。
そんなことどうでも良いと思うぐらい、いや、もはや聞こえていい。誰でも良いから助けに来てくれ、そんな期待を込めて叫ぶと同時に、腕の締め付けと足の間の不快感がなくなり、東堂が距離を取ったのが分かった。
その瞬間、急に力が抜けてへたへたと床に倒れ込む。
当の本人は何喰わぬ顔で部屋の奥に入り電気を付けると、急に明るくなった視界に目が眩んだ。
「分かったか、肝に銘じておけ。これに懲りたら二度と来るなよ」
そう言う東堂の空気はさっきとは打って変わり、普段の私の知っている東堂で、ホッと胸を撫で下ろす。
『ーーー!東堂のばか!!!本当に怖かったんだから!!!』
泣きそうになりながら訴えかけるも、一言も謝罪の言葉はなく、
気をつけて戻れよ、と窓から帰寮を促される。
その態度に若干の苛立ちを覚えながらも、何であんなことをされたのか意味もわからず、
モヤモヤした気持ちを抱えたまま、夜の砂利道をできるだけ音を立てないように歩き出した。
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