第3話


・貴女side



『ちょ、ちょちょちょ!東堂さん!?ってか力強!?』





ズカズカと東堂は何も言葉を発する事なく、連行される。
突き当たりを曲がると、そこから三つ目の部屋の扉を躊躇なく開ける。

幸いその間、東堂のように出歩いている人はいないようで、誰にも会うことはなかった事が全てもの救いだ。

なんて思っているも束の間、東堂は扉を開けた部屋に入ると慣れた手つきで扉を閉め、鍵をかける。
腕を掴まれたままの私もされるがまま、一緒に部屋に入ると、ふわりと東堂の香りが鼻を擽る。

いや、別に東堂の香りとか気にした事無いけどさ。
以前たまたま体育館に忘れて行った東堂のジャージを届けた時に、男のくせに、運動部のくせに、なんて思った事があったから、それから奴の横を通り過ぎるたびに妙に意識してしまい、覚えてしまっただけだ、本当に。





『っ、てか何?本当に…腕痛いんだけど…いいかげん離し、って!?』





暗闇の中で東堂の表情は読めないけど、相変わらず何も言わない東堂に痺れを切らす。

すると掴まれていた腕は離される事なく、空いていたもう片方の腕も掴まれたと思ったら、思いっきり扉に体ごと押し付けられ、ガタッと扉が音を立てる。





『いった…何すんの…よ』





女のことなら俺に聞け!と豪語するぐらい、女子に対しての扱いが上手い、それは自他ともに認められている、と言われている東堂。…私はそんな風に思ったことないけど。
3年間同じクラスで、それなりに仲が良い方だとは思っていたけど、その反面、女子扱いを受けた記憶がない。
だからと言ってこの仕打ち!酷過ぎない!?

睨みつけながらそういうと、ドアの隙間から廊下の光が差し込み、やっと東堂の表情が見える。
その瞬間、ヒュッと喉が鳴ったのが分かった。





「一人の男の部屋に女一人連れ込んで、されることはこう言うことだ」

『っ、ちょ…っ』





ギリっと掴まれた腕がさらに強まる。
痛いし、押し返そうとしても、びくともしない。
自然と目頭が熱くなる。
怖い。流石に。



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