第2話
・貴女side
「女子は男子寮禁制のはずだが。こんな時間に何をしている」
歩き進めて行こうとする東堂を必死に抑えていると
ならばもう一度問う、と堅苦しく口を開く。
もう尋問じゃないんだから。
確かに女子は男子寮禁制だ。逆も然り。
しかしそれは寮の決まりなだけであって、守っている生徒はほぼいない。
もちろん先生にバレたらそれなりの罰はあるわけだから、私自身こっそりしている訳なのだけど。
侵入のプロの先輩から、代々受け継いで、みんな非常口からの入り方を心得ている。
私は2年生の頃、女友達3人と男子寮に忍び込んで、当時仲の良かった友人の誕生日パーティーをした際に来たきりで、ましてや一人で来たのは初めてなんだけど。
東堂は同じ学生でこっち側のはずなのに、
生真面目で、同じ学年とは思えないほどやけに大人び過ぎている東堂を前にすると
先生が相手のようで、ぐぬぬ…と答えにくくなってしまう。
『山田に呼ばれたけど宿直の先生がいるから諦めて帰ろうとした所。ただそれだけ』
「付き合っているのか?山田と」
『まさか』
「なぜ呼ばれたのかわかっているのか」
『私たちゲーム仲間だから』
話せば話すほど、東堂の眉が釣り上がり、眉間に皺が寄る。
こっわ、綺麗な顔が台無しだよ。
そう言ってやりたい気持ちでいっぱいだったが、どうにもそんな空気ではない。
何をそんなに怒っているのか意味が分からない。
何も嘘なんて言っていない。
3年になってから同じクラスになった山田。
進級当初はチャラくて苦手なタイプかなぁなんて思ったりもしたけど、
実際に話してみたら意外と良い奴だったり、好きなゲームが一緒だったりして趣味が合う。
そんな中、今日の昼休みのこと。
新しいゲームを買ったから一緒にやろうと誘われた事がきっかけで今に至る。
「お前、男が女を誘う理由なんて一つしかないだろう」
『?ゲームやるんだよ』
まあ、もう戻るけど。
そう言って再び東堂を追い越し、入って来た非常口へ向かおうとした時。
『っ!?』
腕を掴まれる。
紛れもない東堂の手が、私の腕を思いのほか、強く掴んで来た。
『え、何?』
「ちょっと来い」
『いっ!』
!?!?!?
掴まれた腕を思いっきり引っ張られ、よろけそうになる。
私が向かおうとした方向とは逆に、東堂に引っ張られるがまま、足を進めた。
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