第6話



「2人とも高校生活はどう?」

「んー、ぼちぼちかなぁ」

『聞いてよ瑠璃ちゃん、百ってば中学の時以上にモテ期到来してんの』

「へぇー!」





春原家に入り、おばさんも快くいつも通り家へと招き入れてくれる。
おばさんはおじさんが帰ってから一緒に食べるという事で、3人で食卓を囲う。

正直に高校での話をすると、百は恥ずかしそうにご飯を駆け込む。





「なんなら結衣が百と付き合えばいいじゃん!私結衣が義妹なら大歓迎!」

「ゴフッ...姉ちゃんやめてよ...」

「えーだって百、我が弟ながら結構いい物件だと思うよ?ほら、顔もそこそこだし、運動神経だって良いし」

『それ友達も言ってた!あと優しいとか気遣いが出来るとか!私は誰にでも優しい人より自分にだけ優しい人が良いなぁ』

「あーそれはわかるなぁ」

「告白もしてないのに振られた気分...」





隣で項垂れてる百に、まあ百の良さも何となく分かるよと肩を叩いて励ます。





「結衣ちゃん今日泊まってくでしょう?お母さんには連絡しておいたから」

『えーいいの!ありがとう!久しぶりだなーお泊まり!ちょうど帰るのめんどくさいなって思ってたんだよねー!』

「家すぐ隣じゃん...」

「じゃあ私の服貸してあげるね!先風呂入っておいで!」

『ありがとー瑠璃ちゃん!』





一足先にご飯を食べ終えていた私は、瑠璃ちゃんにTシャツとスウェットを借りてお風呂へと向かう。

小学生ぐらいまではお互い結構な頻度でお互いの家に行き来して、お泊まりもしていたのに、中学に上がってからはなんとなく、少なくなって来たなぁと思っていたところ。

髪を洗いながら、明日学校で百と同じ匂いがするとか揶揄われるのかな...
なんて、一度中学時代にそんなことがあったなと記憶が蘇ってくる。

まあ、どうでもいいけど。
ちゃっちゃと出ようと泡がついた髪と体を、シャワーで洗い流した。






「で、なんで俺の部屋にいんの?」

『何が何で?』





お風呂から上がると、瑠璃ちゃんの部屋に顔を出して、出た事と服のお礼を伝える。
その足でそのまま百の部屋に行き、漫画を一冊手に取ってベッドに座ると、リビングから戻って来たらしい百から声を掛けられる。





『いちゃダメだった?あ、お風呂ありがとー』

「ダメって言うか...姉ちゃんの部屋行きなよ」

『何で?いつも百の部屋で泊まってたじゃん』

「いや、前まではそうだったけどさ...』





かつて春原家に泊まる時は、いつも私は百の部屋で一緒に寝泊まりしたものだ。
今日もその感覚で百の部屋に居座るも、百は納得出来なさそうにボソボソと話す。

何かあるならはっきり言いなさいよ、と口に出そうとするも、百は私を睨み一歩ずつ近付いてくる。





「あのさ、俺男なんだけど」

『そん、なの...知ってる...』





百のくせに私のことを睨むなんて、そう思うも束の間。
ギシリとベッドのきしむ音と共に、百が私の上へと覆い被さって来る。

いつもとは違う雰囲気と、意味深な一言に一瞬戸惑うも、すぐにハッとする。





『あっ、そ、そうだよね!百ももう一丁前な男子校生だもんね!へ、部屋で1人でしたい事だってあるよね!ごっめん!無神経だった!』

「へ?...ちょっとまって、なんか勘違いしてない!?」

『ごめんごめん!私男兄弟とかいないから分かんなかった!なんかねっ!毎日する人とかいるもんね!ごめんほんとに!』

「だ、だからそういう事じゃないって!!お願い!行かないで!」

『いやいや本当に気にしないで!?私瑠璃ちゃんの部屋行くからその間に済ませちゃって!?』

「だから違うってば!!!もういいから俺の部屋で!!!」





百が言いたい事はそういう事だろうと察し、生理現象だもんね!?男の人ってそうだよね!?なんて、よく分かっていないまま気を使い、部屋を後にしようとするも、百は思いっきり焦りながら私の腕を掴み、引き止める。

違うと否定はしてるけど、じゃあどういう意味なんだ。
まあここで突っ込んでも可哀想かと私も黙る。





「百ーお風呂出たよー」

「っ、今行く!結衣!姉ちゃんに余計な事言うなよ!」

『い、言わないよ...流石に...』





顔を真っ赤にしたまま、部屋を飛び出す百にため息をこぼす。
弟のそんな事情なんて、知りたくないだろ...。
いや、私も知りたくなかったけど...。

そう思いながらベッドに倒れ込み、モヤモヤしながら漫画を開いた。



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