第3話



『いたっ』

「うわ!」





噂をすればなんとやら。
トイレから出た所で廊下でふざけていた百とぶつかる。
いや、正確に言ったら百と一緒にふざけていたクラスの男子、とだけど。

一瞬衝撃でぐらりと倒れそうになるも、目の前にいた百がすぐに私の腰を抱き寄せ、壁に手をつく。





「ひゅーひゅー」

「見せつけんなって!」

『めんどくさ...』





何となく、さっちゃんの言いたいことが分かった気がする。

こういう時に咄嗟に、なんの迷いもなく助けてくれるのはやっぱり当たり前では無いのだろう。

その証拠に、ぶつかってきた当の本人は悪びれもなく冷やかしてくるし、ほんとガキかよ。





「ぶつかったんだから謝るのが先だろ」

「な、なんだよ春原、冗談だろ」

『いいよ百、ありがと』





先程まで焦っていた表情が一変、クラスの男子に怒った顔で言い返す百に、もう大丈夫だと腰に添えられていた手を離す。

恐らくこういう所が付き合っていると誤解される部分でもあるんだろうけど、百は私に限らず、誰に対してもこうだと思う。

モヤモヤした表情でいる百を見兼ねてなのか、ぶつかってきた男子が居心地悪そうに謝罪してきたので、本当に大丈夫だと苦笑いで返し、全員で並んで教室へと戻る。





『百、今日部活ある?』

「今日はオフ!なんで?」

『えっじゃあ今日から公開される映画行こうよ!』

「あー結衣が好きな俳優が主演で出るって言ってたやつかぁ、いいよ!けど映画の前にどっか腹ごしらえしてから行こー」

『分かってるって、いつも食べてから行くじゃん』

「お前ら、いつもとかいうレベルで一緒に映画行ってんの?」

『?見たいのがあったら行くだけで、別に映画そんなに行くほど好きなわけじゃないよ』

「いやそういう事じゃねぇだろ」





そんなことを話しながら廊下を歩いていると、予鈴がなってしまったので急いで走って教室へと向かった。




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