第1話






「結衣って春原君と付き合ってるの?」

『もー...またその質問...』





高校を入学してから、早3ヶ月。

この質問をされたのも、もう2桁回数はあるだろう。





『付き合ってないって。ただの幼馴染』

「うっそだー!その割にはいつも一緒にいない!?」

『そりゃ幼馴染だから...』

「いやいやいや!私なんて、男子の幼馴染とは中学ぐらいでもう話さなくなったよ!?」





そういうものなのか、そういうものじゃないのか。

私がそう聞かれた際の返答はいつも同じ。
そしていつも同じような返答が返って来る。

そんなもの、今に始まったことじゃ無い。
むしろ中学生の時から、学年が変わるたびに同じ質問をされ続けていたけれど、高校に入ってからもそれは変わらずだった。

まあ、これも同じ高校に行ってしまった定めなのか。





「でもいいなー、春原君と幼馴染も!」

『…なんで?』

「春原君ってU-15の春原百瀬君でしょ!?私お兄ちゃんがサッカーやってたから結構詳しいんだけどさ!超有名人じゃん!」

『へぇ…』

「おまけに、これは高校同じで知れたことだけど!近くで見たらあんなに顔が格好良かったなんてさ!しかもめちゃくちゃ優しい!」

『…???』





高校になって出来た友人であるさっちゃんは、興奮気味にそう話す。

まぁ、サッカーは百が幼稚園の頃に始めてから、ずっと近くで見ていたから、彼がどれだけ努力してきたかを知っている。
その実力が実り、U-15に選ばれた時は、私も心の底から喜んだし、幼馴染としてなんだか誇らしく思ったことも事実だ。

だからと言って、それが理由で百と幼馴染で良かった、と思ったことはない。
百は幼馴染を超えて、もはや家族の域である。

一緒にいることが当たり前で、昔から、ずっと隣にいた存在だった。

そんな百を、今更カッコイイなんて思ったこともなければ、百がたとえ世間一般的に見て優しかったとしても、今更百の優しさを実感したこともない。

だってそうじゃない?
兄弟や家族を、カッコいいだの、優しいだの、そんな感覚で見ている人なんていないでしょ。

だからこそ、今目の前にいる友人の言っている事が、一ミリも理解できない。


百と幼馴染で良かった、と思うこともなければ、嫌だと思うこともなくて。
彼女の話を、右から左へと聞き流していた。




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