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『花宮真…。風紀委員で、バスケットボール部の主将兼監督、前回の学内実力テスト2位…』
「結衣、何ボソボソ言ってんの?」
『頭脳明晰、スポーツ万能、おまけに品方向性で見た目も良い…そんな高スペックほんとにいるの!?』
「あー、花宮君のこと?」
都内有数の進学校である我が霧崎第一高校。
中でも彼は群を抜いて頭が良く、中間試験、期末試験、学年末テスト、実力テスト、模擬試験、エトセトラ…
進学校ならではの数多く存在する我が校のテストで必ず上位に君臨する男、その名も花宮真。
所属するバスケットボール部はかなりの強豪みたいで、毎日遅くまで練習をしている上に、テスト期間も休みは存在しない。
そんな中でもそれだけ成績が良い彼は、地頭が良いを通り越して天才としか思えない。
もちろん授業態度も良いわけで、先生たちからの評判も信頼度も厚い。
おまけに強豪校の部活で2年生にして主将、監督も兼任しているという統率力や指導力も持ち合わせてるとか本当に何者!?
同じ2年生で有名な彼を知らない人はほとんどいない、と思う。
それぐらい運動においても勉強においても目立つ人だけど、今まで関わりも面識もない私にとっては彼のことはほとんど知らずにいた。
なのになぜ急にこんなに彼のことを観察するようになったのかというと…
『花宮真を取材…?』
「そう!我が新聞部のネタもいい加減尽きて来ちゃってさー!ほら結衣と同じ学年の有名な彼!彼の素性を明かしたネタとかさ、超需要ありそうじゃない?」
『はぁ…』
「と言うわけで、よろしくね!」
『えぇ!?私ですか!?』
なんて新聞部主将の先輩に言われてしまい、今に至る。
新聞部なんて大した活動もしなくて楽そうだからという理由で入ったのに、意外と今年の主将は真面目に活動を行い、日々ネタを探し求めている。
そんなこんなで数日前から彼に密着取材!と言う名目で、花宮君本人はもちろん、クラスの人、部活の人、担任の先生にも色々聞いたけど、なんとまあ、聞けば聞くほどハイスペックであると言うことが明らかになってくる。
『花宮君って苦手なことないの?』
「また来たの?知らないよーオレは」
『原君って花宮君と一番仲良いんじゃないの?』
「いや誰情報だし」
ないない、と笑う原君は、花宮君に取材をするようになってから話をするようになった。
花宮君に会いに来たは良いものの、彼は先生に呼ばれてしまったようで教室にはおらず、仕方なく戻ってくるまで原君と雑談する。
「あれ、今日はどうしたの?」
『あ、花宮君!ちょっと聞きたいことがありましてね!』
「はは、もう話すことはないよ」
そう呆れたように笑う花宮君のこの顔はもう何度も見た。
身長、体重、誕生日、血液型など。基本情報はもちろん、どうでもいいことまで幾度となく聞きにくるようになってしまってから、彼は何度もこの表情を見せる。
だって、そんな完璧な人なんているわけないし。
彼は絶対何かを隠してる!
最初は渋々だった花宮真君密着取材も、なんだかんだ私もムキになって何度も通うようになってしまった。
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