3
・
「お前…もしかして如月か…?」
『え?』
高校2年生の中途半端なこの時期に。
彼はまた、今度は突然現れた。
「ねぇねぇ名前、あの転入生、結構かっこよくない?」
『…』
今日は転入生を紹介するぞ、と担任の先生の一言で教室に入ってきた人物は、今朝職員室で声を掛けてきた人物と一致して。
名前を呼ばれた瞬間、すぐに気付いた。
背もあの頃よりだいぶ高くなってるし、顔もなんだか大人びていたけれど。
高ぶる気持ちを抑えこみ、私も彼の名前を呼ぼうとしたが、先生からの呼び掛けと被ってしまい叶わず。
結局、彼に会ったのはその一瞬。
もしかして、夢でも見た…?なんて思うほど、4年経った今でも、私は椎名のことを忘れられずにいた。
けれど教室に入ってきた彼を見て、自己紹介をする彼を見て、確信した。
やっぱり、椎名だ…。
どういう表情をすれば良いのか分からず、悶々としていると、後ろの席に座っていた友人のなっちゃんが声を掛けてくる。
か、かっこいい…?
まさかの単語が聞こえてきて、戸惑う。
確かに周りを見ると、背が高いだの、イケメンだの、黄色い声が聞こえてくる。
嘘でしょ…?
中学の時は、猿だの、チビだの馬鹿にされていた椎名。
椎名のことを好きだと知っていた唯一の友人であるさっちゃんから、競争率低くてよかったね!なんて言われていたことを思い出す。
私は中学の時から椎名に対してそういう気持ちがあったから分からないけれど、明らかに中学の時とは違うクラスの女子の椎名に対する目線が、やっぱり椎名の変化を物語ってるんだと思う。
『別に、そんなことなくない?なんかアホそうだし』
「名前…辛辣…』
← →