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・貴女side
「あれ?今日の髪型可愛いね」
『へへ、でっしょー』
学校が終わり、いつものようにバイト先へと向かう。
普段と変わらない風景と、変わらない行き先だけど今日は気持ちが全然違う。
髪型が変わるだけでこんなにもテンションが変わるんだ、とルンルンでバイト先に着くと、早速バイト仲間に髪型を褒められてさらにテンションが上がる。
『クラスの友達にやってもらったんだー』
「へぇ、如月と違って器用だね」
『鴫野君は一言余計だよね、ほんと』
そんなことないよ、と屈託の無い笑顔で言われる。
このスマイルに騙された女子は一体何人いるんだろう…。
初めて鴫野君に出会った時は、爽やかな笑顔と、フレンドリーな性格で第一印象はかなりの好印象。
しかし蓋を開けてみれば、まあいい人には変わりないんだけど…
意地悪というかなんというか…
ま、本当のことではあるんだけどさ。
触ってもいい?としっかり許可を取ってから髪に触れてくるあたり、やっぱり慣れてるように見えて変に感心してしまう。
「ほんとにすごいね、プロみたい」
『ね、しかもこれやってくれたの、男子なの』
「えっ」
『え?』
七瀬君を思い出しながら伝えると、彼は驚いたように声をあげる。
え、なに?
「もしかして、彼氏?」
『ち、違うよ!友達って言ったじゃん!』
まさかの想像もしていなかったことを言われて戸惑う。
彼氏!?七瀬君が?
彼氏も何も、つい最近話すようになったばっかですが!?
「へぇー、じゃあ如月に気があるのかもね」
『え!?なんで!?』
「えー、ただのクラスメイトの女の子の髪をやってあげるとか、妹がいて慣れてるか、美容師目指してるか、その子のことが好きか、しかないでしょ?」
『もー!鴫野くんの基準で話さないでよ!その人はそういう人じゃないし!」
へー、とニヤニヤ笑う鴫野君に照れ隠しでエプロンを投げるも、華麗に避けられてしまう。
美容師、目指してるようには見えないし、妹、いるのかな。
それとも、まさか私のこと…
いやいやいやいやいや!ないないないないない!
だってあの七瀬君だよ!?
全く色恋沙汰とか想像もできないし、私だって意識したことなんてこれっっっっぽっちもなかったのに、そう言われるだけで変に意識してしまう。
もうー、鴫野君の馬鹿。
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