・貴女side




「じゃあさ、結衣はどう言う人がタイプなの?」

『なんでそんな気になるのさ…、あの2人はタイプじゃないけど、あんたたちの方がタイプじゃないよ…』





なんで男の子と、しかも出会って間もない人と恋愛話をしなくては行けないんだ…。

もしかして私のこと狙ってる…?とジトーっと2人を睨むと
「んなわけねぇだろ!」と怒る椎名と
「こっちから願い下げだよ」と笑う貴澄。

じゃあなんでそんなこと聞くのよ…と、溜息を吐きもう一度考え込む。





『そうだなぁ、まず身長が高くて、筋肉もあって、顔はかっこよくて、優しくて、男らしい頼れる感じの人!』

「そんな人いないよ…」

「如月こそ少女漫画の見過ぎだろ!」

『いいじゃん別に!理想ってだけだし!』





私の理想は昔っからずっと変わらない。
人に話したのは初めてだけど、そんな馬鹿にされるとは思わなかった…。

そんなの分かんないじゃん、いるかもしれないじゃん。世界は広いんだからね。
ほら、あそこの人なんてまさにそんな感じじゃん!
顔がカッコよくて、身長も高くて、筋肉もありそう!


たまたま目に入った男の人が、私の理想に近い!…ような、気がする!
馬鹿にされたのが悔しくて、無理矢理近づけているだけかもしれ無いけど…。

だって見た目しかわかんないし。

そんな風に自問自答していると、
あれ、あの人、よく見ると遙と真琴と話してる?

扉の影に隠れていて気付かなかったけど、そんな彼の話す先にはやっぱり遙と真琴がいた。
…知り合い?

なんて不思議そうに見ていると、同じクラスの桐嶋君が席を立ち、そちらに歩いて行くのが見えた。





「部活なんかただの遊びだろ」

「郁弥…部活は遊びじゃない」

「遊びだよ。何、競泳に飽きたら次は仲良しクラブごっこかよ、兄貴ばっかじゃないの」





なんか、空気重くない!?
あまり声が聞こえなかったけれど、そこにいるメンバーの表情を見て、なんとなくヒヤヒヤする。

けれどすぐにその男の人は笑って、遙と真琴に手を振って走って行ってしまった。

真琴は困った顔で、遙はいつもと変わらないポーカーフェイスで。
中に戻ってきたけどその前に桐嶋君が立ちはだかり、なんか言われてる。


何があったんだろう。
そう思っているのは私だけではなかったみたいで、さっきまで隣に座っていた椎名と貴澄がそこに割って入る。

なにしてんの!?空気読めないの!?


部外者の私が入っていいのかもわからず、けれど大人しく席に座っている訳にもいかず、だけどその中に入っていける訳でもなく。
輪の少し外でオロオロとしてしまう。





「いいよ、そこまで言うなら水泳部に入って、遊びかどうか試してやる!」





どうやら水泳部の事で揉めているみたいで、普段ふざけている椎名が真剣に怒っていて少し怖かった。
それだけ、椎名は水泳に対して真剣に取り組んでいるんだ。
それはきっと、桐嶋君も同じで。

そんな彼らのやり取りを側から見つめていると、さっきの茶髪の男の人が再び戻ってきて、同じように彼らを見つめる。
…やっぱり、かっこいいかも。





「いやぁ、悪い悪い。これ渡すの忘れてたよ」





水泳部のチラシ。
そう言いながらその場にいた私達にチラシを配る、真琴が桐嶋先輩って言ってたけど…。
桐嶋君と同じ名字…。





「はい」

『あ、ありがとうございます』





貴澄から「僕はバスケ部なんで」と断られた桐嶋先輩は残念そうにしながら、次に目があった私にチラシを渡してくれた。

遙や真琴、椎名や貴澄より、何倍も大人っぽくて。
声変わりを迎えた低い声で。
私の周りの男の子で1番大男な真琴よりも身長が高くて。

爽やかな顔で微笑んでくれた桐嶋先輩にドキッと心臓が高鳴る。





「ここにいる全員入ります!貴澄以外」

「えっまじ!?」





遙や真琴はおろか、まさか私まで。
勝手に椎名に入部宣言をされてしまい戸惑ったけど
遙はバスケ部よりマシとか言うし、真琴は遙がいるならなんでも良さそうだし。

まぁ、結局私も、2人が泳ぐ姿が見られるなら良いんだけどさ。
そう考えながら桐嶋先輩からもらったチラシを見つめる。





「じゃ、ゴールデンウィーク明けにプールで!」





そんな桐嶋先輩の声を聞いて、笑った顔を見て、また一つ心臓が高鳴る。

…水泳部、楽しみだな。





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