・貴女side



「なぁなぁ、水泳部入らない?」

「いやぁ、僕はちょっと…」

「えぇーいいじゃん!一緒に泳ごうぜ!」





担任の先生が来るまでぼーっと座って待つ。

周りは結構1人の人もパラパラいるけど、友達同士話をしている人も多い。
多分同じ小学校の人だろうな。

キョロキョを当たりを見回すも、岩鳶小の人は見当たらない。
……遙がいてよかった…。

遙をチラリと見ると、何を考えているか分からない表情で窓の外を見ていた。


するとクラスの中心で1人、部活勧誘をする男の子の声が聞こえた。





『遙、あの人水泳部入るらしいよ』

「見ればわかる」





その彼は、次から次へといろんな人に声を掛けて水泳部に誘っていた。

ここまで大声で話していると、こちらまで声が聞こえてくるのは当然で。
こそっと遙の耳元に口を近付け、小声で話す。





「君、七瀬遙くん?」

『うわっ』

「僕、鴫野貴澄!佐野小だったんだよね!」





遙と一緒に部活勧誘をしている彼を静かに見ていると、突然真後ろから声を掛けられる。
振り向くと思いの外近くにあったピンク髪の顔に驚き、声を上げてしまった。





「松岡凛に七瀬君の事を聞いたことがあってね」

「凛から…?」

「イワトビスイミングクラブにすっごく速い奴がいるって」

『凛の友達なの?』

「君、誰?」

『ずっといたんですけど…!私h…』

「スイミングクラブ!?お前、SCに通ってんのか!?」





ピンク髪の男の子は鴫野貴澄と名乗り、遙に話しかける。
それを一緒に聞いていると、まさかの凛の名前が出てきて驚く。

そっか、凛って岩鳶小の前は佐野小だったって言ってたな…。
そう思い返しながら鴫野君に私から質問をすると、彼は「あ、いたの?」という表情を見せてきてカチンとした。

ずっとここにいて遙と話してたんですけど!と苛立ちを込めながら答えようとすると、さらにそれに被せるように誰かが話し掛けてくる。

この人、水泳部に誰彼構わず勧誘してた人だ…。
もう!私が話してんのに!!





「SC?」

「スイミングクラブの略だよ!俺、椎名旭!えっと…七瀬!部活はもちろん水泳部入るよな!」

「まだ決めてない」

「え?決めてないの?なら、僕と一緒にバスケ部入らない?」

「横取りすんなよ!水泳部入ろうぜ!なっ」

「スイミングクラブに入ってるならもうそれ以上泳ぐ必要ないよね!だったらバスケ部だよ!」

「うるっせぇ」





遙、なんだかすごい人気者。
当事者の遙を置いて、鴫野君と椎名君はずっと言い争いをしている。

遙を見てみると、うわ…すっごくめんどくさそうな顔してる。

流石に助け舟を出そうと2人の間に割り込む。





『ま、まぁまぁその辺で。ほら、まだ締め切りまで時間あるしさ!遙もゆっくり考えてるから!』

「はぁ?なんだよお前、お前は関係ないだろ!」

「そうだよ!僕たちは七瀬君に声掛けてるんだから」





そう2人から責められるように反撃を受け、さらにまたカチンと来る。





『ーーーっ!関係なくないの!これから遙を勧誘するときは私を通してね!!!』

「なんだよそれ!意味わかんねぇし!」

『意味分かんなくないしっ!馬鹿椎名!』

「ムキー!馬鹿じゃねぇし!……アホ如月!」

『はぁ!?アホじゃないから!!』





まさに売り言葉に買い言葉。
私の制服の胸元についたネームプレートをチラリと見て、椎名は私にアホとか行ってきた。
なにこいつムカつく!!!

それを聞いている鴫野君は「確かに馬鹿そうだしアホそう」とくつくつと笑っていてまたまたカチン。

そんな私たちの姿を横目に、遙は一番前に座っていた桐嶋君を見ていたことを、私は知らないでいた。




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