・貴女side



『遙!真琴!おはよう!』

「あ、おはよう結衣」

「おはよ」





見慣れた沿岸を歩くでこぼこした後ろ姿を見つけ大きく声を掛ける。

桜の木が満開に咲いていて、これからの晴れた気持ちを表しているようだった。





『ふふ、なんか新鮮だね。制服』

「苦しい」

『すぐ慣れるよ!』





ついこの前まで、ボロボロのランドセルを背負って、普段と変わらない洋服を着て、6年間通っていた小学校を思い出す。
それからたった週数間しか経っていないのに、歩く道のりが変わるだけで、着ている服が変わるだけで、こんなにも違って見えるんだなぁ。





『凛、元気かなぁ』

「凛だもん、きっとうまくやってるよ」

『そうだよね!向こうって制服とかあるのかな』





そんな小学校最後の水泳の大会で、遙と真琴と、凛と渚が素晴らしいリレーを見せてくれたこと。
今でも鮮明に、色濃くはっきりと思い出せる。





『2人は部活決めた?中学には水泳部があるんだって!やっぱ水泳部に入る?』

「決めてない」

「ぼ、俺もまだ迷ってて…」

「俺?」

「今日から中学生だし、自分のことは俺って言おうかなって…へへ」





今までずっと僕だった一人称が変わっている真琴に驚いたのは私だけじゃなくて、遙に聞き返されて恥ずかしそうに笑う真琴。

やっぱり、小学校とは違う。
いろんなことが少しづつ変わるんだ。

そんな2人を少し後ろから見つめる。


ずっと昔から、いつも一緒だった遙と真琴。
私は泳ぐのが別に得意でも、好きでもなかったからSCには通っていなかったけれど。

2人の泳ぐ姿をみるのは大好きだった。
だから2人が出る水泳の大会は必ず見に行ってたし、沢山応援した。

中学になってもずっとずっと見ていたいと思っていたけれど、2人はそこまで拘っていなさそう。


ま、それも2人らしくて良いけど。
変わったものはあっても、やっぱり変わらないところも沢山ある。

なんだかそれが嬉しくて、自然と笑みを溢していた。




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