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・貴女side
[次は映画研究会の紹介です]
「ふぁ…」
ここまで沢山の部活紹介が終わったけれど、どれも淡々と実績やら活動内容といった概要を説明されるだけでとっても退屈。
そんなの説明されたってすごいのかどうなのかも全然わかんないし。
自然と出てしまったあくびを噛み殺す。
暇だなぁ、もうさっちゃんと一緒に陸部にしようかな、マネージャーも募集してるらしいし。
と、すでに何組もの部活が紹介されている舞台上を見つめる。
[次は水泳部の紹介です]
「私たち水泳部は去年の春、自分たちでプールを修理する所から始め、水泳部を作りました。私はマネージャーの松岡です。そして…」
あと何分で終わるかなぁ。
あ、この人可愛い。
「会計!」
「2年、葉月渚!専門は平泳ぎ!チャームポイントは…ヒラメ筋、だよ☆」
前回り…脱いだ…。
「副部長!」
「3年、七瀬遙。専門はフリー。チャームポイントは上腕三頭筋」
側転…脱いだ…。
「書記!」
「2年!竜ヶ崎怜!専門はバタフライ。チャームポイントは三角筋アンド上腕二頭筋です!」
回った…やっぱ脱いだ…。
「そして部長!」
「3年、橘真琴。専門は背泳ぎ。チャームポイントは僧帽筋だぁ!」
「素敵な筋肉の新入生、待ってまーす」
今までは多少なりとも各部の発表が終わった後はチラホラと拍手の音が聞こえてたと言うのに、水泳部御一行は幕が閉じる最後まで一生懸命泳ぎのアピールをしているのにも関わらず、全く、一切拍手が聞こえない。
というか、空気が完全に、冷たい。
『…フッ』
「ねぇ今のやばくない?なんだよ、チャームポイントはなんとか筋って…』
『フフ…』
「…?結衣?」
『あっははは!面白過ぎるんだけど!何?素敵な筋肉の新入生って!あはは!』
「ちょ、結衣!声でか!シーっ!みんな超冷めてるよ!?」
『だってさっちゃんっ…、もう無理ツボ!ふふっ…』
後ろに座っていたさっちゃんが身を乗り出し、私の耳元でこそっと話しかけてくる。
その声色は完全に引いていて。
さっちゃんだけじゃない。
3番目の人が脱いだあたりから、この体育館の中は完全にドン引きの渦。
その雰囲気にむしろ笑いが止まらず、だって意味が分からないんだもん。
もはや筋肉部じゃん。
この空気の中、1人だけ笑ってる奴がいると、私まで周りに変な目で見られているけど。
面白いものは面白いんだもん。
『よし、決めた!』
「は?』
『私水泳部にする!』
「はぁ!?」
動機は結局、さっちゃんよりもずーっと単純で。
あの一瞬だけを見て、なんとなく楽しそう!
それだけでまさか、入部届を書くなんて思いもしなかった。
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